脱マスク受診増に困惑 5類移行後 病院「協力を」

受付でマスク着用を呼びかける病院=水戸市酒門町

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行して22日で2週間がたった。この間、医療機関ではマスクを着けずに受診に訪れる人が増え、困惑の声が上がる。政府は3月13日から着用を個人の判断に委ねたが、重症化リスクの高い人の感染を防ぐため、医療機関や高齢者施設への訪問には着用を推奨している。茨城県医師会は「新型コロナは依然、感染力が強い。受診時はぜひ協力してほしい」と呼びかけている。

■着用拒否の声も

「5類移行後、マスクを着けないで来る方が明らかに増えた。ほぼ毎日」

高齢者が次々と訪れる水戸市酒門町の丹野病院で19日、丹野英(まさる)院長は困惑の表情を浮かべた。

院内での感染を防ぐため入り口に設けた受付では、体温やコロナ感染者との接触の有無などを確認している。マスクを着けていない人には着用を求めるが、「5類に移行したのだから着けない」と主張する人もいるという。

同院は内科や外科などがある総合病院で、利用者の9割が高齢者。多くの病床もほぼ高齢者で満床に近いという。感染予防は切実な問題。院内各所には着用を求めるポスターを掲出している。

丹野院長は「重症化リスクのある人たちが利用していることを冷静に考えてほしい」と来院時のマスク着用を強く求める。

■地域医療を守る

受診時のマスク非着用について、県医師会の鈴木邦彦会長は「課題と認識している」と明言する。

同会は5類となった8日から13日にかけ、移行に伴う医療機関での問題点の有無を調べた。対象はこれまでも新型コロナの外来を受けてきた医療機関の約1割で、有効回答は80件。このうち、約2割が「問題あり」と回答し、「感染対策への協力が得にくくなった」など、受診者のマスク非着用を含む指摘が目立ったという。

県医師会はマスクの着用を要請するポスターの掲示を3月から医療機関に呼びかけるなど、啓発に努めてきた。鈴木会長は「理解が進んでいない」と指摘。コロナ禍で多くの医療施設がクラスター(感染者集団)への対応に労力を割いたことから、地域医療を守るためにも「着用してほしい」と協力を求める。

■最低限のマナー

県も着用推奨について広く知ってもらおうと、ホームページに要請文を掲載するとともに、幅広く呼びかけている。大井川和彦知事は19日の定例記者会見で、「しっかりと県民の皆さんに(推奨について)確認をいただきたい」と述べ、医療機関などでのマスク着用の協力を呼びかけた。

着用についてはあくまで推奨だが、重症化リスクの高い高齢者らがいる場所では、感染予防策の一つとなる。県感染症対策課は「医療機関などでのマスクは、最低限のマナーと捉えてほしい」と訴えている。

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