被ばくから子を守り、避難する権利認めて 福島原発事故損害賠償関西訴訟、証言台に立つ女性の思い

「自分の主張や発言には確信を持っている」と話す森松明希子さん=大阪市内

 東京電力福島第1原発事故で、関西への避難者が国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟(関西訴訟)は24日、大阪地裁で本人尋問が始まり、大きなヤマ場を迎える。「法廷ドラマのように、証言台で国と大企業相手にたった一人で訴える。緊張する」と話す原告団代表の森松明希子さん(49)=兵庫県伊丹市出身。事故の発生から12年余り、提訴からは9月で10年となる。本人尋問に臨む思いを聞いた。(鈴木久仁子)

 「やはり裁判するのは長いことかかるなと思う」と、森松さんはこれまでの道のりを振り返る。口頭弁論で互いの弁論や証拠の提出などが続き、ようやく、裁判官や双方の代理人からの質問に答える本人尋問まで来た。今後、80世帯以上の本人尋問が続くため、結審は来年以降になる見込み。「裁判官にきちんと被害の実相を分かってもらえるように、全力で挑みたい」と力を込める。

 原告団には森松さんのように、他の家族と離れて母子だけの避難を経験した人が数多くいる。子どもたちを被ばくから守りたいという思いで名を連ねているが、主張は一貫して変わらない。「避難する権利を認めてほしい」ということだ。被ばくは嫌だから「逃れたい」「避難したい」と思えば、皆「国内避難民として保護され、人権が保障されなければならない」。避難区域とそれ以外に線引きされ、被ばくから逃れたくても区域外からは自主避難となる。「守ってくれる制度はこの12年、何もない」

 母子避難をすれば、二重の生活費に加え、家族再会のための交通費も長年かかる。森松さんは「大変な負担。でも、子どもに被ばくをさせたくない、健康に育って人生を歩んでいってほしい、守りたいと願うのは基本的人権ではないか」とし、「何の保障もなければ逃げられない。次に何か起きたとき、皆さんは逃げないのですかと聞きたい」と訴える。

 「平和で安全な暮らしが奪われたのは、強制避難の人だけじゃない。それ以外の人たちでも同じ被害に遭っていれば、平等に賠償してほしい。人の命や健康より大切で守らなければならないことって、あるのでしょうか」。裁判官に分かってほしいと願っている。

 【原発賠償関西訴訟】福島第1原発事故で避難するなどした人たちが全国で国や東電を相手に集団訴訟を提起。近畿では234人が大阪地裁に起こしている関西訴訟をはじめ、兵庫(神戸地裁)、京都(京都地裁)の三つの原告団が訴えている。避難区域外について東電は「損害が認められず、賠償責任はない」などと主張してきた。

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