TGR WRCチャレンジプログラム2期生がERCポーランドに参戦。轍に苦戦も小暮が4位完走

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかる、大竹直生、山本雄紀が5月19日(金)~22日(日)に開催されたERCヨーロッパラリー選手権の第3戦『ラリー・ポーランド』に参戦した。結果は小暮がERC4クラス4位でフィニッシュし、大竹と山本は最終日のアクシデントによってリタイアとなっている。3選手は全16SSのうち計10ステージでトップタイムを記録するなど好走を見せた。

 ポーランド北部マズールィ湖地方の町『ミコワイキ』にサービスパークを置く『ラリー・ポーランド』は、2017年までWRC世界ラリー選手権のカレンダーに組み込まれていたことでも知られるラリーだ。今大会は3日間で16本のSS、都合182.06kmを走行して争われた。

 ポーランドは高速ステージが多いグラベル(未舗装路)ラリーだが、これまで3選手が経験してきたフィンランドとは路面の性質が異なっており、軟らかく目の細かい砂状のグラベルが路面を覆っているのが特徴だ。今大会ではTGRの3選手はERC4クラスに参戦し、他の25人の若手ドライバーたちとの戦いを繰り広げた。

 ラリーは金曜日の夜にサービスパークの横に設置された、2台が同時に走行するスーパーSSで開幕。そのSS1で山本/ミイカ・テイスコネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)はドライブシャフトの破損によってデイリタイアを喫するが、マシンの修復が完了し再出走を果たしたデイ2には、その日の7本のSSのうち5本のステージでクラストップタイムを記録する好走を見せた。

 大竹/マルコ・サルミネン組のルノー・クリオ・ラリー4はクラス4番手からという良いスタートを切ったが、デイ2最初のステージでコーナーのアウト側に膨らみサスペンションを破損。こちらもデイリタイアを余儀なくされてしまう。一方で小暮/トピ・ルフティネン組は徐々にスピードを上げ、デイ2の午後にはクラス総合5番手に浮上。SS8ではクラス3番手のタイムを記録することにも成功した。

■「3選手のパフォーマンスと成長をとても嬉しく思っている」とヒルボネン

 最終日の朝はTGRの3選手がつねにクラス上位につけ、ERC4クラスのペースメーカーとなる展開に。SS9では山本が、SS10では山本と0.1秒差で大竹がトップタイムを記録し、大竹はSS12でもトップタイムを刻む。しかしこの日の午後1本目ステージでは、路面が荒れて轍(わだち)が大きくなっているコンディションのなかで、山本がスローパンクチャーにより軽く横転。大竹もラジエターにダメージを受け、ふたりともSS13でリタイアを喫する悔しい展開となった。

 小暮は終盤に力を発揮し、SS15と続く最終ステージSS16でトップタイムを記録する。午前中から30秒以上差を詰めた小暮は、後続に4.1秒差をつけてクラス4位でラリーを走り切った。

「今回のような安定したスピードを保つことができれば、全員が表彰台を狙うことができると思うよ」と語ったのは、プログラムのインストラクターとして3選手を指導しているミッコ・ヒルボネンだ。

「山本は最初のステージでトラブルが起きて不運だったが、トラブルがなければトップに立つことができたほど良い走りをしていたね。大竹も再出走後は印象的な走りをしていたよ」

「小暮は深い轍でどのようにプッシュするべきか理解するのに少し時間を要したが、最後にはとても良いタイムを出して順位を上げることができていた。最後の2ステージでは我々が彼を少し追い込んだが、それでもミスなく走り切った。次のラトビアでのラリーが楽しみだ」

4位完走を果たしたTGR WRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかる

■TGR WRCチャレンジ2期生コメント全文

●小暮ひかる(ルノー・クリオ・ラリー4/クラス4位)

「結果をうれしく思っています。どのステージもとても楽しみましたが、路面状況は予想以上に軟らかく、轍が多かったです。このような状況でのドライビングに少し苦戦していたので、土曜日は少し抑え気味にいきましたが、日曜日はもう少しプッシュを試み、タイムも出るようになりました」

「講師陣が轍のセクションにもためらわずに入っていくように後押ししてくれて、それがうまくいきました。良い経験が得られ、良い週末になりました。ペースノートやクルマのセッティングにも良い自信を持つことができ、すべてがうまくいきました。次戦のラリー・リエパーヤではさらに良い結果が出せればと思います」

●大竹直生(ルノー・クリオ・ラリー4/リタイア)

「SS2で外側に膨らみ、木の切り株をヒットしてしまったことで、土曜日は残りのステージが走れませんでした。我々にとって新しいステージとなるポーランドで走行マイレージを稼ぐことが今回のメインポイントでもあったのでとても残念でした。ですが、早い段階から自信を持って走れていましたし、日曜日に再出走した際も同様で、スピードを見せられたことはよかったです」

「ステージは轍がひどく、クルマにとってタフな状況で、特に轍が大きかったSS13のどこかでラジエターにダメージを負い、走行を継続できなくなりました。轍が非常に深い場所や路面が軟らかい場所など、初めての経験ができたのはよかったです。自分としては高速ステージでの走行がとても楽しく、ペースノートもうまくいきました」

●山本雄紀(ルノー・クリオ・ラリー4/リタイア)

「日曜日の午後のアクシデントまではつねに競争力ある走りができ、ラリーはうまくいっていました。ずっとトップ争いに絡むことができていたのは少し驚きでもありましたが、良かったです。自分たちにとっての新しい路面での走行をとても楽しむことができました」

「SS13では、道に大きな穴があったところでのブレーキでパンクをしていたのだと思います。ですがそれに気づかず、次のコーナーに向けてクルマの向きを変えようとしましたが、まったくできませんでした」

「今回のような轍はフィンランドでは経験がなく、私にとって新しく大きな学びでしたが、すぐに適応はできたと思います。車両トラブルとパンクがありましたが、それ以外のステージでERC4の上位ドライバーと互角に戦うことができたのはとても良かったです」

 TGR WRCチャレンジプログラム2期生の次なるトレーニングの舞台は、6月17日~18日に開催されるERC第4戦『ラリー・リエパーヤ』だ。同イベントはバルト海に面するラトビアを舞台に争われる高速のグラベルラリーであり、2024年には『ラリー・ラトビア』としてWRCのカレンダーに初めて組み込まれる予定となっている。

山本雄紀/ミイカ・テイスコネン組(ルノー・クリオ・ラリー4) 2023年ERC第3戦ポーランド

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