復帰開業地での”オープン”はベリーが初勝利、本戦はラーソンが2階級制覇/NASCARオールスター

 2023年NASCARカップシリーズは早くも中盤戦を迎え、恒例のオールスター戦を実施。改修作業を行っていたノースウィルクスボロ・スピードウェイが正式に営業を再開し、1996年以来となるカップ一行を迎え入れると、日曜午後の“オールスター・オープン”ではタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)を撃破したジョシュ・ベリー(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、ノンタイトル戦ながら待望のカップ初優勝。続く夜の本戦“オールスター・レース”ではカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が勝利を飾り、同じく土曜併催のNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第10戦『タイソン250』でも勝ち切り、週末2階級制覇を成し遂げた。

 サウスカロライナ州ダーリントンでの1戦を経て、生まれ変わったノースカロライナ州の0.625マイル・ショートトラックに集結したシリーズの面々は、簡素化されたオールスター戦限定のレースフォーマットに則して週末を進め、金曜からのプラクティスに加えてピットクルー・チャレンジが復活。

 この“4タイヤ”の作業速度により優勝チームには10万ドル(約1385万円)のボーナスが授与されるのに加え、土曜60周×2回のヒートレースとオールスター・オープンのグリッドが確定する。そして日曜100周で争われるオールスター・オープンからは上位2名とファン投票選出の1名、計3名が本戦ファイナルたる200周のオールスター・レース進出が認められる。

 そんな“お祭りムード”の週末を前に話題を集めたのが2021年カップ王者ラーソンに関するニュースで、インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)のメディアタイムに出席したラーソンは、来季2024年にアロウ・マクラーレンから伝統の『インディ500』に参戦することを表明した。

「僕のこれまでのレースに関しては、インディカーよりもはるかにシンプルだと思うよ」と、普段から練習を兼ねたダート競技にも精力的に参加してきたラーソン。「スプリントカーにはウイングバルブが付いているが、後期モデルにはない。ミジェット? 何もない。インディカーでは……もう訳がわからないほどだ(笑)。ブースト、ウエイトジャッカー、アンチロールバーなど、調整として準備しておきたいあらゆる種類のものが用意されている」と指摘したラーソン。

「僕らのNASCARカップは、インディカーのスタイルに少し近づく傾向にあるように感じる。とくに燃料節約などの戦略面でね。その点に関しては、3年前よりも今の方が多くの経験を積んでいると思うが、さっきの機能が何に関連しているのか、それとも僕がこれまで経験してきたものとまったく異なるのかどうかについて、今は意見さえない状態だ」

 初挑戦の来年は「吸収すべきことがたくさんあるだろう」と胸を膨らませる元王者は、約1年後にヘンドリック・モータースポーツ(HMS)とアロウ・マクラーレンの共同エントリーとなる4台目のシングルシーターを走らせる。

「チームは僕にメモやダッシュボードの表示など、見るべきものを詰めた大きなパケット(小包)をくれて、車載映像をいくつかメールで送ってくれた。僕はすでにそれを全部見たよ」とラーソン。

「オンボードを見てシフト操作や各種の調整、コクピットで操作可能なものをすべて見たり、レースの流れがどのようになるか。トラフィックのなかで他のクルマの後ろにどのように位置するかを見るのは、なんだかとてもいい気分だった(笑)」

「ストックカーやインディカーに精通している人たち、ジミー(・ジョンソン)やカート(・ブッシュ)、最近これを始めた人たちとぜひ話したい。とは言いつつ、まだ最初のテストも決まっていないし、早い段階で彼らを緊張させて時間を使い、また後にもう一度同じ質問を繰り返すのは避けたい。彼らの知恵を借りるためにも、少し待ちたいと思うよ」

同地最後の開催となった1996年時と同じく、スタートフィニッシュラインでは集合撮影を実施した
オールスター開催直前の木曜にIMSで2024年のインディ500参戦を表明したカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)
金曜にはピットクルー・チャレンジも実施され、土曜60周×2回のヒートレースと“オールスター・オープン”のグリッドが確定
各ヒートレースではダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)とクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)がポールから勝利を飾った

■24台が争うオールスター・レースはラーソンがオールスター3勝目

 こうして始まったカップ戦のオールスターは、最初のプラクティスから5号車のカマロZL1が最速タイムを記録。チェイス・エリオット(現在は復帰)やアレックス・ボウマンなど、立て続けに負傷欠場が続くHMS陣営のなかにあって「インディ参戦決定で、従来よりもさらに細部に目を向け気を配るようになった」と語るラーソンが、その意気込みを表現するような速さを見せる。

 続くピットクルー・チャレンジではJGRがギブスをポールに送り込み、各ヒートレースではダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)とクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)がポールから勝利。それぞれ本戦のインサイドとアウトサイドの最前列を射止める。

 迎えた日曜のオールスター・オープンでは、序盤こそギブスがリードを維持したものの、終盤戦にマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)からの『報復』を受けたギブスはボトムに追いやられ、その間隙を突いたHMSのベリーが残り23周で逆転。「ああ、とても安心したよ」と、今季カップでは負傷続きのレギュラーに代わってピンチヒッターを務めてきた男が、待望の勝利を手にする結果となった。

 これでベリーとギブス、そしてファン投票で選出されたノア・グラグソン(レガシー・モータークラブ/シボレー・カマロ)らが24台で争うオールスター・レースへと進出。ここで序盤から動いたのが16番手発進だったラーソンで、最初のコーションから“4タイヤ”のフレッシュラバーを選択する。

 ピットロード出口のスピード違反でペナルティを受け、さらに後方からのリスタートを強いられたものの、早くも55周目にはスアレスを捉え、ここでラーソンが実質的に勝負を決めてしまう。

 これで中盤100周のブレイクを挟んで、最終的に145周を牽引した2021年チャンピオンが、シャーロットとテキサスに続いて3回目のオールスター戦制覇を達成した。

「それが何を意味するのかさえわからないよ!」と、土曜のクラフツマン・トラック・シリーズも制していたラーソン。「これは僕にとって3回目のオールスター勝利であり、3つ目の異なるトラックだ。こんな歴史的な場所で、そしてメンバーとファンのおかげで、とても素晴らしい週末になったよ」

 その土曜開催のシリーズ戦にて、今季初の2台体制を敷いた服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、61号車としてエントリーしたカップ戦レギュラー、クリストファー・ベル(トヨタ・タンドラTRDプロ)が予選9番手からピットでのロスが響いて16位に。16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRDプロ)は、無念のクラッシュに巻き込まれ26位に終わっている。

日曜午後の“オールスター・オープン”ではタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ/右)を撃破したジョシュ・ベリー(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、ノンタイトル戦ながら待望のカップ初優勝を決めた
ファン投票で選出されたノア・グラグソン(レガシー・モータークラブ/シボレー・カマロ)らが24台で争う“オールスター・レース”へと進出
序盤のコーション戦略で最後方からの逆転劇を演じたラーソンが、オールスター3勝目を手にする結果に
「僕らはロングランで素晴らしいクルマを持っていたし、確実にイエローが出るだろうと思っていた」と勝者ラーソン

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