那覇市松尾の靴修理の老舗で、医療用装具の製作にも取り組む大田製靴店(大田守誠代表)は、装具を必要とする子どもたちがデザインや色を自由に選べる新サービスを昨年10月から始めている。企業間の連携を支援する県の補助事業で装具の多様化を実現した。大田社長は「装具は選べるということを知ってほしい」と話す。装着率と同時に「稼ぐ力」の向上も目指す。(政経部・大城大輔)
同店によると、デザインを施すには手間や経費がかかる。装具は国の基準で価格が決められているため、同様のサービスは敬遠され、全国的に珍しい。
装具は医師の指示の下、同店の義肢装具士が採型して製作している。
脳性まひなどのリハビリに不可欠な装具は、治療効果に影響を与える。従来品は単色が一般的で、デザイン性に乏しく、装具を必要とする子どもたちが着けたがらない一因にもなっているという。
そうした子どもや親から「もっとかわいく、着けたくなる装具がほしい」などとたびたび相談が寄せられたことをきっかけに新サービスの着想を得たという。
同店が利用した県の補助は、県内事業者の収益力や生産性の向上を図ることを目的とする「稼ぐ企業連携支援事業」。転写シートを使って装具の素材にデザインを複写するためには、専用のプリンターや技術が必要なため、オリジナルTシャツを製造、販売するチップチップ(那覇市)と連携している。
デザインは「働く車」や魚、恐竜など、カラフルな20種類。従来より薄く、かつ強度もある装具に使うプラスチック素材を国立研究開発法人の物質・材料研究機構に委託して開発中だ。
転写シートは全国の義肢装具会社へ販売しており、市場の活性化、質の向上につなげると同時に、自社の収益の一つの柱となることを期待する。
大田代表は「自身でデザインを選ぶことで愛着がわき、装着率が上がり、リハビリ意欲が向上する。子どもにとって最適な装具の提供をサポートしたい」と話した。
