大分にジビエの「学校」 ノウハウ指導一手に 加工流通業者

ジビエ(野生鳥獣の肉)の解体技術や活用方法、栄養機能などが学べる「日本ジビエアカデミー」が6月から大分県宇佐市で開校し、研修が始まる。手がけるのはジビエの加工・販売をするサンセイ(宇佐市)。人材育成と流通する商品の品質底上げを狙う。農水省鳥獣対策・農村環境課によると、ジビエの民間研修施設は前例がないという。

食肉処理に加え、鳥獣被害の実態やジビエの基礎知識を座学や実地で学ぶ最長1年のカリキュラムを設定する。希望に応じ、狩猟講習なども行う。

受講希望者を全国から随時受け入れる。食肉処理業や農業法人の関係者、若手の狩猟免許所有者を想定。既に群馬や福岡から受講希望者がいる。行政の研修も受け入れる。

研修施設は2階建て。冷蔵機能付きの剥皮室、内臓摘出室、熟成室、解体室、加工室を設けた。2階には座学スペースとキッチンがある。

同社は牛や豚など食肉流通のノウハウを生かし、2017年にジビエの加工流通を手がける会社「宇佐ジビエファクトリー」を開設。ただ既存のジビエ食肉処理場では、設備や肉の切り分けなどのノウハウが平準化されていないとの課題に直面した。

山末成司社長は「野生動物は個体差が大きく、用途に合わせて適切に処理する必要がある。こうした学習機会がなく、消費側とのミスマッチが起きている」と指摘する。

同社は家畜の処理や衛生管理などをベースにジビエの処理技術を構築。県の補助金などを活用して研修施設の創設につなげた。

農水省によると現在、捕獲された鹿やイノシシがジビエとして流通する割合は1割程度。山末社長は「捕獲後の命を無駄にせず、利活用に取り組む人材を育てたい」と意気込む。

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