早朝の漁港、車がドスンと海に転落…ロープ投げ消防に通報 姫路の男性3人「無我夢中」の救助リレー

男性を救助し「しらさぎ賞」を受けた(左から)岡本仁志さん、岡本庸二さん、中谷純一さん=姫路市飾磨区中島、飾磨消防署

 車に乗ったまま海に落ちた70代男性を救助したとして、兵庫県姫路市が同市に住む男性3人に、市の善行賞「しらさぎ賞」を贈った。冷たい海から協力して男性を引き上げ、命を救った3人。「賞は光栄だが、それよりも助けられて良かった」と笑顔だった。

 同賞を受けたのは、渡船業の中谷純一さん(56)、会社員の岡本仁志さん(64)、無職の岡本庸二さん(69)の3人。

 事故は4月16日午前6時ごろ、妻鹿漁港(同市白浜町)で起きた。県内在住の70代男性が、車の運転を誤り、岸壁から海に転落。30メートルほど離れた場所で船を整備中だった中谷さんは、車輪が岸の車止めを乗り越える「ドスン」という音を聞いた。急いで駆け付けると、沈む軽乗用車と、脱出した男性が浮いているのが見えたため、無人の停留船に飛び乗ってロープを投げた。だが1人では引き上げられず、叫んで助けを呼んだ。

 仁志さんと庸二さんは散歩のコースが同じで顔見知りだったといい、この日も港で散歩をしていた。「助けてくれ!」という叫び声を聞いた2人が駆け寄ると、中谷さんが男性を引き上げようとしていた。庸二さんは中谷さんとともにロープを引っ張った。仁志さんは消防や警察に通報。通話を続けながら現場まで誘導した。

 気象庁によると当時の海水温は10度台。飾磨消防署によると、搬送時男性は低体温症を引き起こしていたが、その後回復したという。

 17日に同署であった贈呈式で、中谷さんは「見つけてから引き上げるまでのことを覚えていない。そのくらい無我夢中だった」と振り返った。(成 将希)

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