今さら聞けない「なぜカーボンを使うの?」ドライバーの素材について教えて

巷には様々なゴルフクラブがあふれ、自分にぴったりの一本を見つけるのは至難の業。そもそもクラブを選ぶにも難しい用語が多く出てきて、深く知ろうとすることを敬遠している人も多いのではないか。そこでクラブ選びに役立つ「基礎中の基礎=“ゴルフクラブのABC”」を、拠点の香川県まで全国から“患者”が訪れるすご腕クラブフィッターたけちゃんに分かりやすく教えてもらう。

はじめまして、たけちゃんです。今回はドライバーの素材について解説します!

ドライバーヘッドは「重量配分」が重要!

【アマチュアSさんの“今さら聞けない”】
ドライバーのヘッドには主にどのような素材が使われていますか? 見た目で金属というのは分かりますが、近年は「カーボン」が使われているというのを聞いたことがあります。

【たけちゃん'sアンサー】
歴史をたどると、柿の木が原材料の“パーシモン”という「木製」から、「ステンレス」、「メタル」と続き、その後「チタン合金(以下、チタン)」、そして現在主流の「カーボンコンポジット」、いわゆるカーボンとチタンの複合素材ドライバーへとつながっています。

今までは「フェース(ボールに当たる面)」を含むクラブヘッド全体が同じ素材で作られる一体型が多く、ここ数年はフェースがチタンで、主に「クラウン(ヘッド上部)」や「ソール(ヘッド下部)」にカーボンが使われているドライバーが主流です。

ギアメーカー各社がカーボンを使用する理由は、「剛性が高い」ことと、最大の特徴である「軽さ」を活かせるためです。重量が不要な部分に軽いカーボンを使用する事で、より必要な場所に重量を配置できるのです。

赤丸部分の重量比重を大きくすることで芯が広がる(画像はSIM2)

最も重量が必要な箇所は、基本的にソールのフェースから一番遠い後部。ここの重量比重を大きくすることで、ボールをとらえるときの有効打点エリア、つまり「芯」が広くなりミスヒットに強くなるというわけです。

また、クラウンは特に軽い方が良いとされ、“極論”を言えば重量だけの観点からすると「空気」でもいいくらい。もちろん空気抵抗を考えるとそういう訳にもいきませんので、クラウン部はカーボンでできる限り軽くし、その「余剰重量(余った重量)」をソール側に持っていくことで、低重心になって高い打ち出しと低スピンの両方を確保できるというメリットがあります。

「カーボンフェース」ってなに?

これがカーボンフェースだよ!(ステルス2)

近年はフェースにもカーボンを使うドライバーも出てきました。テーラーメイドの「ステルスシリーズ」は、フェースにチタンではなくカーボンを使用し、それがいわゆる「カーボンフェース」と呼ばれているドライバーです。カーボンフェースの長所は、チタンの半分ほどの重さにできることであり、軽量化できた分の余剰重量を別の場所に使い、ドライバーを進化させられるという点です。

一般的なドライバーヘッド全体の重さは200グラム程です。そもそも“飛び過ぎ”を規制するために、フェースの「反発係数(跳ね返す力を示す数値)」の上限値は「0.830」までと決められていますので、近年の開発競争は、その200グラムをいかに必要な場所に適切に配置できるかという「重量配分」の勝負になっているといっても過言ではありません。

カーボン素材自体が飛距離に大きく影響するとは考えにくく、すなわち「カーボンだから飛ぶ」ということはありません。むしろ私のフィッティングの経験上、カーボンフェースはパワーヒッターでは性能を発揮しますが、スイングスピードが速くないゴルファー(具体的には45m/s以下)の場合は、スピンがかかりにくく「ドロップボール(野球のフォークボールのようにストンと落ちる球)」になる傾向があるので個人的にはお勧めしていません。

ちなみに今はカーボンが最も軽くて丈夫な素材といわれていますが、もっと優れた素材が出てきたら、(当たり前ですが)そちらに移行していくことでしょう。

たけちゃんの1分動画解説

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