忍者の里で異彩を放つゴルフ場 「なんでもトライ」を地でいく名物支配人 ~ローズGC

滋賀県甲賀市信楽町――。この地名を見れば、三重県の伊賀と並ぶ忍者の里、あるいはたぬきの置き物で有名な焼き物の産地を連想する方が多いだろう。もうひとつ、このエリアの特徴を挙げるならゴルフ場が多いこと。隣接する京都はもちろん、大阪からも、名古屋からも渋滞がなければ、1時間30分以内という都市部からのアクセスの良さもあり、市内には20以上のコースが存在する。そんな全国でも有数のゴルフ場激戦区で近年、独自の発展を遂げているのがローズゴルフクラブ。新オーナーが送り込んだ支配人が次々に新たな挑戦を繰り返し、他のコースにはない魅力を発信している。

山名正浩支配人は関ジャニ∞の村上信五似と評判

「遅刻ですか? あきませんよ」。駐車場を少し慌てた様子で走っている女性客を見つけると、山名正浩支配人がこう声を掛けた。これだけでなんとなくゴルフ場の雰囲気が伝わってくる光景だ。「私のキャラクターというのが、まあ高級な感じではないんでね。ただ、気さくにフレンドリーにやるのは得意かなと思っています」。関ジャニ∞の村上信五似と評判の名物支配人がこのコースを大きく変えた仕掛人。顔だけではなく、軽妙なトークと明るいキャラクターも“本家”を彷彿とさせる。

「なんでもトライ」の精神

「なんでもトライ」の精神で経営を立て直すことに奮闘する

新オーナーの誘いを受け、親族が経営するゴルフ練習場から転職する形で、山名支配人がこのコースにやってきたのは5年前のこと。当時の名称はしがらきの森カントリークラブ。地域で最安値がウリのコースだった。「他のコースの名前を出して『今日はいくらでやってるぞ』とフロントで値下げ交渉をするお客さんもいるぐらい。安いのでお客さんは入っているけど、経営は大赤字でした」。

オリジナルのクラフトビール製造所をガラス張りにしてアピールする

外注していた掃除や洗濯を社内で行うなど、コスト削減策を打ち出したが、そこには従業員の反発もあった。「従業員は経営状態を知りませんでしたし、単純に仕事が増えますからね。利益が出れば、給料も上げられるし、賞与も出せると何度も繰り返し説明しました」。ここでもトーク力が生きたのだろう。従業員も徐々に「なんでもトライしてみる」という経営方針に理解を示すようになっていったという。

周囲を巻き込むことで生まれた「シナジー」

水耕栽培で作られるトマトや葉物野菜はレストランで提供される

さまざまな新規事業を立ち上げているため、従業員は必然的にマルチタスクをこなすことになる。コースの敷地内で始めたトマトや葉物野菜の水耕栽培はレストランの料理人が担当。さらに今夏から提供するオリジナルのクラフトビールの製造も加わり、料理人は大忙しだ。「『オレは酒飲まれへんしなあ。なんとしてもビールを成功させたいなあ』と言ってやってもらいました(笑)」。山名支配人はいわゆる下戸。酒造免許の申請に行った際には「『飲めない人が来たのは初めてだ』と笑われました」。いい意味で口八丁手八丁。周囲を巻き込むエネルギーは生まれ持ったものだろう。

エントランスにはクラシックカーや像のオブジェが並ぶ不思議なゴルフ場

多くのゴルフ場が取り組む女性ゴルファーの取り込みにも力を入れる。「友の会の年会費を女性は無料にしています。女性が誘ってくれれば、男性はなかなか断りませんからね」。女性用のパウダールームには照明がついた“女優ミラー”を設置、シャワーヘッドも美容効果があるとされるものを採用している。地域柄、祇園の女性がラウンド後に出勤というシチュエーションも想定してのもので、実際にそうした利用者は多いという。

”映え”を狙った、練習グリーン脇の「ROSE」のオブジェ

SNSの活用も若い女性客には大きなアピールになっている。練習グリーンの脇にある大きな「ROSE」のオブジェを筆頭にインスタ映えする撮影スポットを複数用意。写真を見れば、そこがローズGCであることが分かるように撮影スポットには看板などを設置している。「宣伝広告費のつもりで、オブジェやモニュメントを設置して、お客さんと一緒に宣伝していけたらなと思っています」。SNS効果もあって、女性客の割合は5年前の7%前後から18%へと大きく向上している。

アピールできるスペースを無駄にしない雰囲気が伝わるエントランス

また、ローズGCはフットゴルフを常時受け入れている関西で唯一のゴルフ場でもある。「1.5ラウンド目を希望する方はすべてアウトを回ってもらって、インコースはフットゴルフ用にしています。『ゴルフ場でサッカーなんかさせて』というお客さんもいらっしゃいますが『じゃあゴルフの料金を上げなきゃいけないかもしれませんね』と言うと納得してくださいます(笑)」。フットゴルフが行われているのはちょうど、ラウンドを終えたお客さんがお風呂に入っている時間帯。空き時間の有効活用につながっているという。

「またローズGCが何かやってんな」と思ってもらえるように

隣接するグランピング施設。ゴルフ場の利用者は意外と少ない

さらに目を見張るのは宿泊施設の充実ぶりだ。利用されずに物置となっていたロッジを取り壊し、グランピング施設をオープン。また、コース近くの邸宅を買い取り、一棟貸し切りの高級宿泊施設にリニューアルした。いずれも好評を博しているが「宿泊していただいた方のほとんどがゴルフをしていないのが現状。2つの宿泊施設とゴルフ場でいかにシナジーを発揮していけるのか、そこも考えていきたいなと思っています」。ゴルフとは関係なく、宿泊だけで利用したくなる魅力的な施設だということでもある。

一棟貸し切りの高級宿泊施設もオープン

「年に2つは新しい事業をやりたいと思って、やってきましたが、これからはそれぞれの質を上げていく段階。それでも、お客さんには『またローズGCが何かやってんな』と思ってもらえるように、新しい種はまき続けないといけないなと思っています」。名物支配人のペースに巻き込まれているのは従業員以上に、次に何が始まるのかを楽しみにしているお客さんかもしれない。

ローズゴルフクラブ ゴルフ場詳細

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