ピアニスト・海野雅威の新作『I Am, Because You Are』リリース&名匠ルディ・ヴァン・ゲルダーとの約束を語る

(c)John Abbott

ピアニストの海野雅威が、ニュー・アルバム『I Am, Because You Are』を本日5月24日にリリースした。

本作はニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音された。ブルーノート、プレスティッジ、インパルスなど、数多くの名門ジャズ・レーベルの歴史的名盤を手がけた名エンジニアの故・ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで、実は海野はルディが生涯最後(2016年)に録音したピアニストだった。今回はルディ唯一の弟子であるモーリーン・シックラーが録音を担当。ブースに入らず同じ部屋で編集のきかないライヴ感を大切に録音。トリオの一体感や天井の高いスタジオの自然な響きを捉えている。

(c)John Abbott

今回録音場所にヴァン・ゲルダー・スタジオを選んだ理由を海野は次のように語る。

「生前のルディ・ヴァン・ゲルダーに会えたのは本当に奇跡的なことでした。2016年にジミー・コブのバンド・メンバーとしてレコーディングに参加したのですが、当時、ルディはすでに引退されていて、新録音はしていない状況でした。しかし、“ヴァン・ゲルダー・スタジオでレコーディングしたい”というジミーの依頼を受けて、例外的に自ら録音を引き受けてくれました。長年の友人同士であり、歴史的なレジェンド2人が会話しているのを横で聞いているだけで僕はとても幸せでした。そのレコーディングにはロイ・ハーグローヴも参加していて、それがきっかけで彼のバンド・メンバーになったので、個人的にも特に思い出深いレコーディングです。スタジオの中にはスロープができていて、段差もなくて、電動車椅子に乗ってルディが現れた時は“神様が来た”という感じでした。普段はレコーディング中の音楽のことに対して、良いとも悪いとも言わない方のようですが、その時はすごく楽しんでくれていました。新作のエンジニアを担当してくれたルディの唯一の弟子のモーリーン・シックラーもそこにいましたが、彼女が“こんなに機嫌のいいルディは本当に珍しい”と言うほどでした。とても温かい目をした方で、“君自身のプロジェクトがあるときは、ぜひまたこのスタジオに来てほしい。それまで僕は元気でやってるし、今度はもっといい音でレコーディングできるから”と声をかけてもらいました。絶対“これでいい”と満足しないのが真のレジェンドであり、だからこそ長年、第一線に立てたんでしょうね。その2ヵ月後に亡くなってしまうとは思いも寄りませんでした。今回このスタジオに7年ぶりに戻ってくることができました。ルディはもういないけど、僕のプロジェクトでヴァン・ゲルダー・スタジオに帰ってこられて、約束を果たすことができたという思いです」

録音中、海野の頭には、今は亡くなってしまったルディ・ヴァン・ゲルダーやジミー・コブ、そしてロイ・ハーグローヴへの想いがあふれていたという。そうして完成したアルバムは、曲・演奏・録音の3拍子が揃ったピアノ・トリオの新定番となっている。

■リリース情報

海野雅威トリオ
『I Am, Because You Are』
2023年5月24日(水)発売
SHM-CD仕様 UCCJ-2223
¥3,300(税込)
Verve/ユニバーサルミュージック
ご予約はこちら→https://Tadataka-Unno.lnk.to/IABYAPR

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