腕が突然上がらなく…中年に起こる「四十肩」「五十肩」の症状や治し方は 医師が解説、糖尿病の人は要注意

 右の腕が突然上がらなくなりました。上腕が「首の寝違え」のような状態で、肘を立てて上げようとすると痛みがあり、力が入りません。よくいわれる「四十肩」「五十肩」なのでしょうか? どうすれば少しでも痛みを和らげられるのか教えてください。(40代男性)

【お答えします】山門浩太郎福井総合病院スポーツ整形外科部長

「気合と根性」は有害

 いわゆる五十肩(あるいは四十肩)とは、多くは40代から50代の人に突然肩痛が生じ、徐々に肩が上がらなくなっていく病気です。古くからよく知られたように、ほとんどの人は1年程度でよくなっていきますが、発生原因だけでなく予防方法も実はわかっていません。

 病気の経過として痛みの強い「急性期」、次いで肩が動かなくなる「慢性期」、徐々にすべての症状が改善していく「回復期」という3段階があることも特徴的です。

 治療としては、アイロン体操などのリハビリの必要性が強調されますが、痛みの強い急性期はリハビリを含めて痛みを生じる動作はすべて避け、なるべく安静に過ごすことが原則です。痛い時期に頑張って動かそうとすると肩の動作範囲(可動域)の障害や痛みといった症状がかえって悪化するため、「気合と根性」は有害なだけとなります。また、夜間痛が問題となることが多いため、薬物療法を中心とした「痛み対策」が重要となります。

糖尿病の人は長引きやすい

 急性期を乗り越えたのちにアイロン体操などのリハビリを開始しますが、ここでも痛い動作を避けることが重要です。しかしながら、適切な治療を行っていても回復には時間がかかり、さらには5%程度の人は完全に回復せず手術が必要となることもあります。特に血糖値のよくない糖尿病の人では症状が重くなりやすく、また経過も長引きやすいとされています。

 また、急性期において同様の症状が生じる「腱板(けんばん)損傷」や「石灰性腱炎(けんえん)」といった病気との区別が必要です。放っておけば治る病気と簡単に扱わず、痛みや日常生活の障害が重大な場合や、経過に心配があるときは医療機関への受診が適切です。

 ところで、ご相談にある「首の寝違えのような状態」や「突然、肩が全く上がらなくなる」といった経過は、典型的な五十肩の症状ではないように見受けられます。むしろ、頸椎(けいつい)などの神経の問題などが疑われるところです。「力が入りにくい」という状態も、痛みのためであれば五十肩でもあり得るところではありますが、やはり典型的とはいえません。医療機関への早めの受診が必要と思われます。

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