停電復旧に3日!テクノロジーの最先端シリコンバレーは電力が不安定!?

この番組をラジコで聴く

世界の流れは「脱炭素」。アメリカのシリコンバレーではすべての電気が再生可能エネルギーで賄われている地域がある。しかしそこには、“テクノロジーの最先端”らしからぬ日常が起きていた。昨夏渡米し、スタンフォード大学でSDGsについて研究している、尾川真一・客員研究員が5月22日、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で電力事情について報告した。

電気は100%再生可能エネルギー

私が暮らしている、カリフォルニア州パロアルト市はサンフランシスコの南にあります。ここでは2013年から100%再生可能エネルギー由来の電気が供給されています。基本的には太陽光と風力です。カリフォルニア州なので晴れの日も多いですし、日照時間も長いので、太陽光がメインになるというのは、州内の他の地域でも同じかなと感じています。

頻繁に停電、復旧にも時間がかかる

ただ、太陽光は天気に左右されるため、不安定です。近年、気候変動のせいなのか、去年9月は熱波が来て、カリフォルニア州はものすごく暑かったんです。暑過ぎて、みんなが冷房をたくさん使ってしまったために、夜の電力需要が急激に上がったのですが、太陽光発電による電気はないので、供給が追いつかなくなり、辺り一帯が停電してしまいました。需給バランスが崩れて、逼迫してしまったわけです。

日本とは違ってアメリカの弱いところで、一度停電してしまうとなかなか復旧しません。結局、その日の夜は窓を開けて寝る。次の日もまた夜になると停電して、また窓開けて寝る。という状況が3日ぐらい続きました。復旧を待つというよりは、諦めているというような感じでした。

私は日本のインフラってすごいな、と初めてそのときに感じました。最近でも冬の嵐で木が倒れて電線が切れて停電したのですが、復旧するのに3日ぐらいかかりました。このあたりってテレワークをしている方が多いので「Wi-Fiが切れてテレワークができません」という方が結構いましたね。

不満が募りそうなものだが…

すごく不思議なんですが、テクノロジーの最先端といわれているシリコンバレーなのに、あまりにもインフラが弱いんですね。スタンフォード大学は学内の電力を100%再エネで賄っていますが、先ほどと同じように夏暑過ぎてみんなが冷房を使うと、電気が足りなくて停電しました。

停電すると、建物の入口にある電子ロックが開かなくて、中に入れなくなります。ところがこういうことが起きても、社会全体がそれを常識としてとらえているので、苛立ったり不満を募らせたりする人は私が見る範囲いませんでした。

日本は真似できるのか?

日本も2050年にカーボンニュートラルを実現するという目標を立てているので、それに向けて着実に再エネの比率を高めていくことは必要でしょう。けれども、この間もG7環境会議で、日本は火力発電所を維持する方向ということで、世界的には批判されていました。

なかなかこの問題の解決は難しいと感じています。まず日本社会が、アメリカで起きている電力不足による停電に対し、寛容になれるかどうか。便利であることに慣れてしまっているので、こういう不自由な状況を受け入れられるかどうかというのは、大きな問題だなと思っています。

もう一つは国の地理的な問題として、アメリカや中国のように広い国土があるところの再エネ政策って、砂漠のような何もない土地に太陽光パネルをずらっと並べて、風力発電も10基20基じゃなくて山全体、丘全体を覆うように風車を建てています。規模が違うんです。この規模でできるアメリカや中国だから、風力、太陽光で再エネの6~7割を確保できているんです。

再エネ政策は日本独自の方法で

でも、日本はそうはいかないですよね、山が多いですから。山の斜面に太陽光パネルを並べるとなると、エリアは限られるし、労力もすごくかかる。日本は日本なりの再エネ政策を進めていくのが一番いいと感じています。

例えば水資源は豊富なので、水力という手もありますし、バイオマス発電もありますよね。それから、福岡県でも一部導入されていますが、田んぼや農地の上にソーラーパネルを設置するといった、ソーラーシェアリング農業といった方法もあります。そういったものを組み合わせていくしかないのかなと思っています。

やはりアメリカに来て感じるのは、「世界の流れは完全に再エネ、カーボンニュートラル」ということ。日本にいると、そこまで緊迫感は感じませんでした。

スタンフォード大学客員研究員・尾川真一さん

プレミアム会員登録をして全国のラジオを聴く!

プレミアム会員登録はこちら

田畑竜介 Grooooow Up

放送局:RKBラジオ

放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分

出演者:田畑竜介、武田伊央、尾川真一

番組ホームページ
公式Twitter

この番組をラジコで聴く

※放送情報は変更となる場合があります。

© 株式会社radiko