社保料上乗せ、負担増に労使反発 少子化財源議論「賃上げ水差す」

首相官邸で開かれた少子化対策の財源を話し合う「こども未来戦略会議」=22日

 少子化対策の財源確保に向けた社会保険料への上乗せ案を巡っては、すでに労使双方から「賃上げの機運に水を差す」と反発が起きている。現役世代や企業の負担が増えるためだ。今後、高齢者や単身者らからも不満が出る可能性がある。政府は「社会全体で支え合う必要がある」と強調し、理解を求めている。

 「社会保険料の負担増は現役世代の可処分所得を直撃し、個人消費の増加に待ったをかけるものだ」。4月27日、政府の「こども未来戦略会議」で経団連の十倉雅和会長は、議長の岸田文雄首相らに異論をぶつけた。日本商工会議所の小林健会頭も、中小企業が大きな負担を強いられることになると訴えた。

 企業は現在、児童手当や保育所運営などのための資金を出している。保険料増により、さらに負担が拡大する事態を嫌う事情がありそうだ。

 連合の芳野友子会長は5月22日の未来戦略会議に意見書を提出。賃上げが広がった春闘に触れ「この流れを次年度以降の取り組みにつなげていく必要があり、賃上げに水を差すことがあってはならない」と強調した。

 国民1人当たり月500円程度と検討される負担増は、児童手当の拡充など子育て世帯へ振り向けられる想定。高齢者や単身者といった子育て世帯以外の人からも理解を得る必要がある。政府関係者は「人口が減り続ければ年金や医療、介護の支え手が消え、制度そのものが維持できない。世代を超えた支え合いが必要だ」と話した。

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