林外相に問う! エマニュエル大使の「LGBT関連発言」は内政干渉ではないのか|和田政宗 我が国における法整備は、我が国の国民や国民から信託を受けた国会議員が決めることであり、外国から何かを言われて進めるものではない!(サムネイルは「アメリカ大使館・領事館 US Embassy Tokyo & Consulates in Japan」チャンネルより)

日米同盟を壊しかねないエマニュエル大使の行動

G7広島サミットが閉会した。新たにG7という場において、ウクライナのゼレンスキー大統領からロシアの侵略に立ち向かう断固たる意志が示され、G7各国は連帯して必要とされるあらゆる支援を強化することが確認された。

我が国からは、トラックなど約100台の自衛隊車両を供与することが表明されたが、これで支援が十分であるとは決して言えない。戦後の世界秩序と言われるものが崩壊し、侵略を堂々と行う国が出てくるなか、日本は平和を希求する国々のリーダーの気概を持って、世界の国々とともに侵略国に立ち向かっていかなくてはならない。

日本はこれまでのように軍事分野での支援について、「出来ることしかしません」という考えを転換すべきであり、「防衛装備移転三原則」を見直すとともに、自衛隊において順次退役させている多連装ロケットシステム(MLRS)がウクライナに渡る方策を実現すべきだ。防衛装備品から廃止になれば、その防衛装備品は国や自衛隊保有のものではなくなるので、最終的にウクライナに渡るようにすることは可能だ。

MLRSはウクライナが欧米各国に供与を求めており、ロシアをはじめとする侵略国にあらゆる手段で立ち向かう姿勢を我が国も示さなければ、侵略国は、「日本は侵略に対抗しない国」「各国と軍事的に連帯しなかったので各国から応援も来ないだろう」と、日本は侵略しやすい国だと判断し侵略を始めるかもしれない。世界の平和と我が国の平和は、今までの価値観では守れなくなったのだから、我が国は覚悟をもって決断し行動することが重要だ。

そうした観点からも日米同盟は極めて重要であり、世界のなかでも最も重要な同盟であると私は考える。しかしながらその関係全体を壊しかねない行動を、ラーム・エマニュエル駐日米国大使がとっている。

逃げの答弁に終始した林芳正外務大臣

現在、我が国ではLGBTの方々への理解増進のあり方について議論が行われている。法整備が必要か否か、理解増進のあり方について議論をもっと深めるべきとの意見、もし法整備をする場合でも、個別法としての対応でなく、G7各国に見られるようにすでに存在する法律を改正し、労働分野などでの平等原則を定めるべきではないかとの意見がある。女性のスペースを守るためにはどうするかの議論も継続している。

そうしたなか、エマニュエル大使は、我が国に対し「早期に法律を制定すべきだ」などとメディアのインタビューに答えてきた。また、自民党でLGBTの方々への理解増進のあり方について議論する会議が開催されていた最中の5月12日午後4時22分、「果たして時間を使うべきでしょうか」と議論打ち切りを促すような趣旨の動画をツイッターにアップロードした。

これが、個人の意見であるなら何か言うべきものではないが、ツイッターに上げた動画では、わざわざ駐日米国大使であることのテロップを入れているし、駐日米国大使としてメディアのインタビューに答えている。

今回のことに限らず我が国における法整備は、我が国の国民や国民から信託を受けた国会議員が決めることであり、外国から何かを言われて進めるものではない。これを譲ってしまったら日本は主権国家でなく、過去の被占領国時代と同様になってしまう。そうしたことから、私は5月22日の参院決算委員会で、このエマニュエル大使発言問題を政府に対し質問した。

初めに、「この一連の発言について、政府は、個人の発言か、米国大使としての発言か確認しているのか」と、質問した。これに対し、林芳正外務大臣は、「駐日米国大使がLGBT関連について発言しているということは承知」しており、「米国とはLGBTの問題を含めて様々なやり取りをしているが、大使の発言の性質を確認したか否かを含め、その一つ一つについて明らかにすることは差し控えたい」と答弁した。

さらに私は、個人の発言ではなく駐日米国大使としての発言であるならば、内政干渉に当たるのではないかという指摘があることをどのように考えるかを質問。これに対し、林外務大臣は、「内政干渉という用語は必ずしも一義的ではなく、何が内政干渉に当たるか否かを一概に述べることは困難であると考えている」と答弁。

このように質問に正面から答えていないことから、私は「例え同盟国の大使であっても、米国大使としての影響力を行使して我が国の法整備や政策に何かを作用させようとするのであれば、我が国はそれに対して毅然とした対応を取るべきだと考えるが、政府はどう考えるか」と質問。林外務大臣は「政府としては、米国大使の意図を述べる立場にはない」と、逃げの答弁に終始した。

米国では性自認を議論することを禁じる法律も

政府は、駐日米国大使としての発言なのかを公式に確認し、もしそうであるならば毅然とした態度をエマニュエル大使に取るべきであるし、私が危惧しているのは、もし来年の米国大統領選挙で民主党政権でなく、共和党政権になった時に日本がどう見られるのかという点である。

共和党では、LGBTの方々への理解増進のあり方については慎重な意見があり、共和党が知事を務めるフロリダ州では、公立学校で性自認や性的指向などについて議論することを禁じる法律が昨年成立し、当初の対象年齢は小学3年生までであったが、今年になって高校生まで拡大された。

さらに、その他の共和党が知事を務める州では、トランスジェンダーの若者への規制も強まっている。テネシー州では、今年3月、未成年が性別適合のための治療を受けることを禁止する法案が成立した。

すでに、サウスダコタ州やミシシッピ州でも同様の法律が成立しており、ミシシッピ州のリーブス知事は、法案に署名した理由について、「誤ったイデオロギーのもとで、子どもたちが(自認する性とは)異なる体を持ったと信じ込まされている」(3月4日 日経新聞)と語っている。

こうしたことから、米国が共和党政権になった時に、「日本はなぜ民主党のエマニュエル大使の圧力で行動したのか」と問われる可能性がある。だからこそ、我が国は我が国で、LGBTの方々への理解増進のあり方を考えるべきなのである。

これらについては、「G7前にLGBT理解法案を提出しなければ、G7で大変なことになる」との話が、実際はどうだったのかを見てみてもわかる。G7では、LGBTの方々に特化した議論ではなく、ジェンダー平等、女性の人権を守ることなどのあらゆる人権問題のなかでLGBTの方々についても議論が行われた。

「暴力」という表現が入っていることに驚いた

G7の首脳宣言にはこう記されている。

「ジェンダー平等及びあらゆる女性及び女児のエンパワーメントの実現は、強靭で公正かつ豊かな社会のための基本である。我々は、あらゆる多様性をもつ女性及び女児、そしてLGBTQIA+の人々の政治、経済、教育及びその他社会のあらゆる分野への完全かつ平等で意義ある参加を確保し、全ての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させるため、社会のあらゆる層と共に協働していくことに努める」

「多様性、人権及び尊厳が尊重され、促進され、守られ、あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」

宣言文においては、女性や女児の権利が後退することに強い懸念が表明され、女性やLGBTQIA+の方々が経済などの分野で、平等な参加機会が確保されることに努めるとしている。これらは我が国でも当たり前のことであるが、私は宣言文で「暴力」という表現が入っていることに驚いた。

我が国においては、LGBTQIA+の方々への暴力などあってはならないと国民全体が認識しているし、もし暴力を受けることがあったら、みんなが止めるはずだ。LGBTQIA+の方々への「暴力」について言及されるような社会では我が国はないし、世界でそのようなことが起きているなら、それは各国が連帯し防ぐべきである。

こうしたことを見ても、LGBTの方々への理解増進のあり方は、各国の社会状況や文化、宗教的価値観でも違いがあり、我が国は我が国でしっかりと議論をしていくべきだ。決して法案ありきではない。議論継続を党内で強く主張した議員として、ブレずに行動していく。

同様の考えの議員も、その考えを貫こうとしている。我々は有権者から投票を受け活動をしている。私のもとに多く寄せられている、慎重意見、議論継続の意見をしっかり受け止めて行動したい。

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和田政宗

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