脊髄損傷患者「無線」で歩行回復 脳の命令を腰の近くの装置へ

歩行機能回復を図る装置の移植を受けた脊髄損傷患者=スイス・ローザンヌ大病院(研究チーム提供・共同)

 【ワシントン共同】背骨を通る神経が事故で傷つき、足がまひした脊髄損傷の患者に、脳からの命令を無線で腰近くの神経に飛ばす装置を移植し、歩く機能を回復させたと、スイス連邦工科大ローザンヌ校などのチームが24日、英科学誌ネイチャーに発表した。さらにリハビリを重ねると、つえを使えば装置を稼働させなくても歩けるようになったという。

 患者は10年以上前に自転車の事故で歩けなくなった40歳の男性。以前、脊髄を電気刺激する実験に参加し、ある程度足が動くようになったが、歩き出したり止まったりする動作や、起伏のある地面の歩行は困難だった。

 チームは男性の頭の骨を一部切除し、脳を覆う硬膜の外から脳波を読み取る直径5センチの電極を移植。データは携行可能なコンピューターが受け取って分析し、股関節や膝、足首を動かす意思を捉えて背骨に埋め込んだ装置に無線で伝達、神経を刺激し筋肉を動かすことを試みた。

 最初に数分間、意思と脳波のパターン、刺激と足の動きを関係づける調整をすると歩行が可能になり、階段の上り下りもできた。

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