【なにわ男子】長尾謙杜インタビュー「未完成」を大切に、岸辺露伴の青年期を演じる

© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

高橋一生が主演を務める映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が5月26日(金)より公開される。

本作は大人気コミック『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』を原作にしたドラマの、キャスト&スタッフが再集結。パリのルーヴル美術館に所蔵されているという「この世で最も黒い絵」を巡る物語を描く。

長尾謙杜が演じるのは、高橋が扮する人気漫画家“岸辺露伴”の青年期。まだ漫画家デビューしたばかりで、現在のように自信に満ち溢れた人物像とは少し違った初々しさの残る露伴を表現する。既にキャラクターとして出来上がっている高橋が作り出した“露伴”とはまたひと味違う、長尾が見せる新たな“露伴”とは?

想像もつかないことに驚きが大きかった

――出演が決まったときの印象を教えてください。

すごくびっくりしました。自分の好きな漫画が原作のお話でもありましたし、ドラマも一視聴者として楽しんでいたので、想像もつかないことに驚きが大きかったです。そのあと徐々に実感が湧いてくると、不安や怖さも出てきました。

――クランクイン前はどんな心境でしたか。

クランクインの前に、衣裳合わせやリハーサルなどで監督を始めとするスタッフの皆さんと何度かお会いする機会があったんです。そのときにいろんなお話をさせていただいていたので、「クランクインが怖い」とかはなかったです。特に初日は、監督からたくさんのことを教えていただきながら撮影した記憶があります。

――監督からはどのようなお話を?

最初に「一生さんをあまり意識しないでほしい」と言われました。「意識しないとダメだと思っているところもあるだろうし、それで準備をしてきたとも思うけど」って。僕自身、そう思っていたところもあったので、その言葉で少し考え方が変わって、より自分が原作を読んだときに感じたものを基にしていきました。

――露伴の独特な衣裳を着用したときはどう思いましたか。

「おおっ」っていう感じで、(自分を見て)「露伴だ!」とはならなかったです。近づいてはいるんですけど、恐れ多いという感情の方が大きかったんだと思います。

――演じる上であの衣裳は後押しになりましたか。

それはなりました。衣裳ももちろんですし、メイクさんも、美術さんも、監督を始めとするスタッフの皆さんが作り上げてくださったもののお陰で、より役に入りやすくなることは絶対にあります。それは今回に限らずどの作品でもそうです。

“未完成”ということを大切に

――“青年期の露伴”を演じる上で意識していたことは?

一生さんが演じられている“岸辺露伴”は、皆さんも同じように感じていると思いますが、芯もこだわりも強くて自分を貫ける人だと思うんです。ただ僕はその“青年期”を演じるに当たっては“未完成”ということを大切にしていました。

漫画家デビューしたばかりで、自分の絵や作品には自信はありつつも、自分を貫けない。映画の中でも描かれていますけど、今の露伴だったら言い返すだろう周りからの指摘を受け入れて考えるところがあります。その出来上がってない感じですね。

あとはやはり奈々瀬(木村文乃)との出会いは大切に演じました。今の露伴の記憶の中に残っていて、それを思い出すことで今回の映画の物語が動き出す、そのくらい重要な経験で、不思議な体験だったと思うので。

――“未完成”なところはどのように表現しましたか。

普段から僕はお芝居をする上で、「こういう言い方にしてみよう」みたいな考え方はしていなくて、演じる役の気持ちになって、そこで発せられたセリフがその役そのものなんだと思っているんです。

だから意識的にやっていたことではないんですけど、完成作を観たときに、一生さんが演じられている露伴よりもだいぶ早口だなって。自分が演じていたときに感じていた以上に早口になっていました。

これは誰しもそうだと思うんですけど、ゆっくりしゃべることって自信がいると思うんです。普通にしゃべっているとつい空間を埋めたくなりますよね。それをしないでいられるのは、自分というものを持っているからだと。そういう意味で、今の露伴よりも未熟であることを早口が表現しているのかなと思いました。

――奈々瀬とのシーンでは、露伴が敢えて“ヘブンズ・ドアー”(※露伴が持つ“特殊能力”で、人の心や記憶を本にして読むことができ、そこに指示を書き込むこともできる)を使わないという場面が描かれます。原作でも重要なシーンの一つですが、演じるときはどんな想いがありましたか。

露伴の葛藤を感じました。(心を)読むことができるのに読まなかったということに、いろんな想いが込められているので。1回は読もうとするけど、「今じゃない」ってとどまるのには、「見たくない」という感情もあったんだろうと思っていました。

“ヘブンズ・ドアー”の能力が使えたら……

――撮影現場ではどのように過ごしていましたか。

歴史のある旅館をお借りして撮影をさせていただいたんですけど、映画の中にも出てくる中庭みたいなところに池があって鯉がいたんです。その鯉をずっと見ていました。「(鯉が)何考えてるんやろう?」とか思いながら(笑)。

スタッフさんとお話をさせていただいたりもしていましたけど、自分時間というか、自分なりに過ごさせていただいていました。

――スケッチブックに絵を描いたりもしていたそうですね。

それこそ、劇中で(青年期の)露伴が描いている絵は、僕がホンマに描いたものが使われています。

――映画公式TikTokでは岸辺露伴の“漫画を描く前の準備体操”にも挑戦されていましたね。

難しかったです(笑)。でもあれは本当に準備体操になると思います。頭も使います。ドラマシリーズでは一生さんがやっていて、僕は劇中ではやる場面はなかったんですけど、ここでできていい経験になりました。

――長尾さんのアイドルとしての準備体操のようなものはありますか。

ライブ前は一応準備運動をしますけど、ルーティンのような決まったものはないです。自由気ままに過ごしています(笑)。テンションを上げるために好きな曲を聴いたりはしますけど、洋楽も、邦楽も、アップテンポも、バラードも、そのときにハマっている曲を聴くので決まったものはないですね。

――もともと『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのファンだったそうですが、好きになったきっかけは何でしたか。

友達にすごく好きな子が居て、それでどんな作品なのかと思って見てみたら、色のタッチが独特で惹かれました。僕はお勧めされたからと言って見るとは限らないんですけど、『ジョジョ』は調べたときに「読んでみたい」って思いました。

(今回の映画の原作の)『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の表紙もすごく引き込まれます。ただ最初は絵から入りましたけど、読んでみるとエピソードも素晴らしかったです。

個人的に2部(『ジョジョの奇妙な冒険 Part2 戦闘潮流』)が結構好きです。まだ“スタンド”が出てきていなくて、“波紋”なんですけど。「スタンド」で言うと、5部(『ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風』)ですかね。ジョルノ・ジョバァーナが主人公で、海外の街並みが出てきたりもして面白いなと思います。

――もし“ヘブンズ・ドアー”の能力が使えるとしたらどうしますか。

書き加えることは誰にもしないと思います。一番見てみたいのは自分ですかね。「自分って何考えてんのやろう?」って、自分で自分のことがわからないってあるじゃないですか。本心では何を考えているのかを文字にして読んでみたいと思います。憧れの人は、憧れられなくなったら嫌なので見たくないです。

――改めて完成作を観たときの感想を教えてください。

自分が出ているシーンは観ていて緊張しましたし、反省点をいっぱい見つけてしまいましたけど(苦笑)、全体としてはめっちゃ面白かったです。

現場では青年期の部分しか観ていなかったので、他のシーンは初めて観たんですけど、特にパリの一生さんはカッコ良かったです。実際にフランスで撮影しているというのも、露伴がフランスに行っているというのも、迫力がありました。いつかプライベートでフランスに遊びに行ってみたいという気持ちがより強くなりました。

個人的に好きな場面があるんですけど……それは映画が公開されて、皆さんが観られるようになってから言おうと思います(笑)。

本当にこれまで見たことのないような映画になっていると思います。ドラマを観ていた方も、特に観たことのない方はびっくりするような作りになっているかと。この奇妙な世界観は他にないと思います。


本作は原作やドラマのある作品ではありますが、そこに触れたことのない人でも十分に楽しめる映画となっています。このインタビューを読んで“ヘブンズ・ドアー”って?と思った方も、ちょっと奇妙な世界を受け入れる心構えさえあれば、予習はなくても大丈夫です! 長尾さんが演じる高橋一生さんとはまた別の魅力を持った“露伴”をぜひ劇場で確認してください。

作品紹介

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
2023年5月26日(金)全国ロードショー

(Medery./ 瀧本 幸恵)

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