外国人2人が名古屋の魅力を発信 「名古屋はつまらなくない!」と情熱を注ぐ

2018年度、名古屋市の「都市ブランドイメージ調査」で、全国8都市中最下位になった愛知県名古屋市。「名古屋は観光する場所がない」という地元住民の声も聞こえてくる。しかし、そんな声に対して「Nagoya is not boring(名古屋はつまらなくない)」という名前で、海外向けに名古屋周辺の魅力を発信している2人の外国人がいる。

スペイン出身のエリサベス・ヨピスさん(以下エリさん)とドイツ出身の山口レナさん(以下レナさん)に、2人の名古屋への思いや活動内容を聞いた。

日本・名古屋との出会い

ウェブ・グラフィックデザイナーで歴史好きだったエリさんは、2週間の日本旅行中に京都で見た和菓子のパッケージに目を奪われた。

エリさん「日本のデザインはシンプルに見えるけど複雑で、空間の取り方が上手です。日本のデザインを勉強したい、と強く思いました」

スペイン出身のエリさん(エリさん提供)

そうして、同じく日本好きだった夫と2007年に来日。愛知県岡崎市の語学学校で2年間、日本語を勉強した。学校を卒業した後は名古屋のウェブ制作会社に入社。その会社自体、外国人の採用がはじめてだったこともあり、苦労したという。

ウェブ制作会社で働いた(エリさん提供)

エリさん「語学学校で学んだ日本語はあくまでもベースでした。ウェブの専門用語や敬語など難しいことばかりで、毎日大変でしたよ」

一方、レナさんは大学で日本語を学び、留学も経験した後、2015年に来日。東京のITコンサルティング会社で働いた。

ドイツ出身のレナさん(エリさん提供)

レナさん「東京は大きすぎて、人が多くて私には合っていませんでした。仕事は3年で辞めて、当時付き合っていた日本人の彼と世界一周旅行に出かけたんです。その時に『やっぱり日本がいい!』と思いました。日本はきれいで安全だし、日本食も恋しかったんです」

世界一周旅行中にプロポーズされ、彼の地元である名古屋に住むことになった。レナさんは「名古屋はすごく住みやすい」という。

レナさん「地元の人も『名古屋は観光するところはないけど、住みやすい』と言っているのをよく聞きます。コンパクトで交通の便もいいし、何より名古屋飯が大好きです」

名古屋飯が大好きだというレナさん(エリさん提供)

2人の出会いと、コロナ禍による挫折

2人の出会いは2019年。それぞれ仕事を辞めて独立していた。

エリさんはフリーランスのデザイナーとして独立。愛知の魅力を紹介するWebサイト「Kawaii Aichi」を立ち上げ、外国人向けに発信し、インバウンド観光アドバイザーとしても活躍していた。一方レナさんも、外国人向けに名古屋飯を紹介するツアー「Nagoya Foodie」を立ち上げ、活動。

同じ名古屋で似たようなことをしていた2人は、共通の友人を通してすぐに知り合うことになる。出会ってすぐに意気投合した2人は「それぞれが1人でやるより、一緒にやった方がいいんじゃない?」と「Nagoya is not boring」の構想がスタートした。

着物の着付けや料理教室などの体験ができるツアーを企画(エリさん提供)

外国人が名古屋を体験できるようなツアーを企画し、2020年4月にWebサイトをオープンした。しかし、この時期はコロナ禍真っ只中。外国人観光客は日本に入って来られなくなり、計画していたことがすべてできなくなってしまった。

エリさん「名古屋の体験ツアーは、私たちが一番情熱をかけていたものだったので、本当に悲しかったです」

それでも、オンラインツアーやクラウドファンディング、VR観光など様々なことに挑戦した。しかしオンラインツアーは大手が強く、なかなかうまくいかなかったという。

方向転換に成功 ツアーも再開

しかし、2人は活動していく中であることに気がついた。

エリさん「愛知エリアでインバウンドの対策に苦労している人が多いと感じました。そして、この地域は観光コンテンツやプロモーションが圧倒的に不足しています。そもそも愛知の魅力に気づいていないことも多く、私たち外国人の目線でできることがあると気づいたんです」

こうして観光コンサルティング会社「株式会社ナノボ」を立ち上げた。観光コンテンツの開発支援や観光専門学校の講師も務めており、大忙しだという。コロナの逆境に負けず、みごと方向転換に成功した。

現在は外国人観光客も戻ってきて、ツアーも再開している。名古屋飯ツアーや商店街でのストリートフードツアーが人気だという。

ツアーを行うレナさん(エリさん提供)

レナさん「名古屋の濃い味付けは外国人にも人気があるんですよ。この地域には八丁味噌のような独自の発酵文化もあるし、歴史や文化もおもしろいものがたくさんある。もっと多くの人に紹介していきたいですね」

活躍する2人に、今後の目標を聞いた。

息ぴったりの2人(エリさん提供)

レナさん「ツアーが増えてきたので、自分たちでガイドするだけではなく、外国人を受け入れてくれるホストの人も募集して増やしていきたいと思っています」

エリさん「今は2人だけで活動していますが、今後は仲間を増やして、愛知県以外の岐阜や静岡などにもエリアを拡大していきたいと思っています。そして、もっと多くの外国人にこの地域の魅力を伝えられるようになりたいですね」

中谷 秋絵

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