最上氏統治期の山形城図を再構築 芸工大生、研究まとめた冊子作成

完成した冊子を読みながら、最上期の山形城について考察を深める東北芸術工科大の学生ら=山形市の同大

 東北芸術工科大歴史遺産学科の学生らが、最上氏が治めた時期の山形城下を記録したとされる絵図について、研究成果をまとめた冊子を発行した。往時を伝える貴重な資料として取り上げられてきた「最上家在城諸家中町割図(もがみけざいじょうしょかちゅうまちわりず)」(通称・藤原守春本)を「実態を示すものではない」と評価するなど、これまでの研究に一石を投じる内容で、学生は「山形城の研究進展に役立ててほしい」とする。

 冊子「最上期山形城絵図の世界」は、最上期(1592年ごろ―1622年)の絵図5点に加え、改易後の鳥居期を描いた「出羽国最上山形城絵図」(正保城絵図)を取り上げた。写真合成によるゆがみのない絵図の画像や、崩し字で書かれた家臣の名などの文字情報を読み解き、再構築した「トレース図」を解説文とともに収録した。

 藤原守春本は、改易の引き継ぎで使った公的資料とみられてきた。学生の研究では、改易前後を記録したとされる他の絵図と比較し▽一部の道が途切れている▽二ノ丸に家臣の名が書かれていない屋敷がある▽1500カ所余りの屋敷のうち18組が同姓同名―といった作りの粗さを指摘。随所にみられる絵画的表現も踏まえ、57万石を誇った最上期を賛美する目的で、江戸後期に正保城絵図や往時の家臣の名簿などを組み合わせて作られたと推察した。

 冊子の作成は、近年の発掘調査の進展や、改易後400年が経過したことなどを受け、北野博司教授(考古学)の指導の下、昨年度の1~4年生7人が約1年かけて取り組んだ。今春卒業した土井愛夕美さん(23)=山形市出身=は「大学で身に付けた古文書を読み解くスキルを生かした研究で、市民にとって当たり前の“事実”が揺らいでいく面白さを感じた」と振り返り、「多くの人が山形城に興味を持つきっかけとなればうれしい」と話す。

 A4判25ページフルカラーで600部を印刷し、県内外の自治体や図書館、高校、大学などに配布した。来月、同大の研究成果を紹介するウェブサイト「論文・アーカイブズ」で公開を予定している。

江戸時代の山形城下を描いた絵図を読み解き、再構築したトレース図などを収録した「最上期山形城絵図の世界」

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