北海道の教育最前線 “先生がいない”小学校に義務教育学校も

今回は北海道で新しく動き始めた教育現場を取材した。

【“先生がいない”!? 北海道5つ目の私立小学校「まおい学びのさと小学校」】

長沼町の廃校になった校舎を改築し、この春開校した「まおい学びのさと小学校」。

開校を祝う集いで、校長は「この学校は先生がいない」とあいさつ。いるのは先生ではなく、スタッフ。子どもたちに寄り添う存在だ。集いの間、子どもたちは自由に動き回り、自然と「笑顔」があふれる。

この学校、学年もなければクラス分けもない。あるのは、「まおい料理店」「まおいパフォーマンスクラブ」「まおいわくわく工房」と書かれた3つのプロジェクト。

子どもたちはこの中からひとつを選択。プロジェクト単位の体験学習を通して学年の壁なく一緒に活動する。漢字や計算などの基礎学習は、プロジェクトとは別にしっかりと時間をとっている。

私立の小学校「まおい学びのさと」の入学料は20万円。授業料、教材施設費は合わせて月4万2000円だ。初年度の今年は、1年生~4年生を募集。各学年定員20人のところ、1年生は定員の倍、40人の応募があった。今年は全校生徒55人でスタート。先生、ではなくスタッフは5人。1人で10人ほどを受け持つ。公立の小学校ではできない手厚い体制だ。

生徒は北海道内外から「新しい学び」を求め、やってきているようだ。子供の入学に合わせ、家族で移住する人も。

札幌から移住する家族も

課題も見えてきた。学校の年間の運営費は8000万円ほど。国からの私学助成金などを活用しているが、経営を安定させるのは簡単ではない。スタッフは校長含め8人。その人件費を抑えざるを得ないのが実情だ。

今月に入っても入学の問い合わせが北海道内外から多数寄せられている。「教えない学校」の需要は確実にある。近隣の農家からの支援も増えていて、今後地域の理解が深まることで、その存在意義はさらに大きくなりそうだ。

【安平町の“復興のシンボル” 義務教育学校「早来学園」】

札幌から車で1時間ほどの安平町。この春開校した「早来学園」。2018年の胆振東部地震で、早来中学校が大きな被害を受け、プレハブ校舎での生活に。再建計画の中で「復興のシンボル」として小中一貫の「義務教育学校」が建てられた。北海道には今、こうした義務教育学校が合わせて26校あるという。

1年生から最年長は9年生。全校合わせて310人の児童・生徒がともに学ぶ。学校のコンセプトの一つが「地域開放」。図書室などを地域の人たちが自由に利用できる一方、学校の中へは児童・生徒と教職員しか入れない仕組みに。そこで導入しているのが、顔認証のシステムだ。

体育館は「大アリーナ」。安平町には総合体育館がなく、ここも町民が利用できるつくりになっている。ランニングができる「走路デッキ」も。

教室は、教科ごとに分かれている。外国語室は発音が聞きやすいように吸音効果
のある絨毯ばりの床になってる。どの教室も黒板がなく、使うのはデジタルホワイトボード。効率性も重視する。

全国から注目を集める最先端の教育。これからも注目したい。
(2023年5月27日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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