「カーボンニュートラルにも多様性を」自動車メーカー集結 日本の技術を世界に発信

G7サミットのため、各国のトップが続々と広島にやって来た先週末―。広島市内では日本のエネルギー政策に抗議する集会も行われる中、国内自動車メーカーのトップが集結し、脱炭素社会にむけた取り組みをアピールしました。

「カーボンニュートラルにも多様性を!」

乗用車から軽・大型・二輪車までさまざまな技術に込められた思いを世界に発信。

小林康秀 キャスター
「世界における日本車のシェアです。四輪では30%(2300万台)、大型車は16%(56万台)、二輪車はなんと46%(2000万台)となっています。グローバルに展開する日本の自動車産業にとって今、大きな課題となっているのが、カーボンニュートラルです。中国やヨーロッパでは、すでに電気自動車の市場が形成されつつあります。国内メーカーの現状と今後の取り組みを取材しました」

広島での展示会を前にした記者会見で日本自動車工業会の 豊田章男 会長は、去年の平和記念式典で読まれた『平和への誓い』を紹介しました。

日本自動車工業会 豊田章男 会長
「2人の小学6年生が子ども代表としてメッセージを伝えてくれました」

平和記念式典 平和への誓い 子ども代表(去年)
「本当の強さとは違いを認め、相手を受け入れること。過去に起こったことを変えることはできません。しかし、未来は作ることができます」

日本自動車工業会 豊田章男 会長
「カーボンニュートラルも全く同じだと思います。違いを認め、相手を理解する。そのうえで一刻も早く、共通の敵である炭素を減らすために、みんなで協力して、今すぐできることからやっていくことが大切だと思います」

展示会は、国内メーカー14社でつくる日本自動車工業会が、カーボンニュートラル達成に向けて取り組みの多様性を訴えようと開きました。

会場の6つのゾーンには、電気自動車や電動バイクなど、すでに市販されているものから開発中の車両までの35台と、水素やカーボンニュートラル燃料など、さまざまな事例が紹介されています。

トヨタ・ダイハツ・スズキの3社で共同開発されたBEV(バッテリー式電気自動車)システムを搭載した商用軽バン電気自動車です。今回、初めて公開されました。

いすゞ自動車 片山正則 会長
「(商用車の場合、)1トンの荷物を何キロ運んだかっていうのが商売になる。特徴をお客さんがどういうふうに使うか、使われるかという選択なんです」

物流領域では、燃料電池よる大型トラックからBEV(バッテリー式電気自動車)の小型や軽トラックまで、使われる環境を考えて多様な技術で対応していこうと提案しています。

小型車でグローバル展開するスズキは、インドでバイオガスの精製事業を行っていて、天然ガス自動車の展示を行いました。

スズキ 鈴木俊宏 社長
「3億頭の牛の出す牛糞を活用すると、3000万台の車を1日に動かせるんです。これだって立派なカーボンニュートラル対応というか、CO2の排出量削減の1つであるわけです」

また、スズキでは、ホンダ・ヤマハ・カワサキとともに水素エンジン技術の普及に向けて共同研究をスタートさせました。

スズキ 鈴木俊宏 社長
「基礎的な研究とか始まりの部分は協調領域として各社で知恵を出し合うとか。あとは本当に商品化に向けてのところは競争領域で、それぞれのメーカーの特色を出していく」

二輪メーカーのヤマハは、通学や通勤など日常の移動にはバッテリーEVがいいとしながらも、大型バイクなどロングツーリングには、燃料系の技術革新に期待を寄せています。

ヤマハ発動機 日高祥博 社長
「水素の内燃機関の研究開発もしたいし、あとはレースの世界では使っていますけども、イーフューエル(合成燃料)に対応した内燃機関。こういった研究開発を進めておきながら、今までのお客さまにとっての価値を失わせない形で内燃機関を残せたらなという取り組みをしています」

ホンダの 三部敏宏 社長は、電動化への加速が増していると分析しています。

ホンダ 三部敏宏 社長
「数年後を今、考えてみると、われわれが当初、予測したよりも早く進んでいるというのが現実であるということです。1つ、加速の要因としては、EUをはじめ、非常に規制を含めてかなり早く進んでいるということです」

地元メーカーのマツダは、どう取り組んでいくのでしょうか?

マツダ 丸本明 社長
「われわれマツダは、まだEVに対して内燃ほど技術の蓄積があるわけではなくて。いろんな業種の方がたと協業をしながら技術を学び、技術を手の内化していくところも一生懸命やっています」

内燃機関から電動化に移行することで業態の方向転換を強いられるサプライヤーもあり、国内の自動車産業全体では550万人の雇用に影響があるといわれています。

ホンダ 三部敏宏 社長
「業態を変えていかなきゃいけないサプライヤーも当然、出てくるという認識でいます。自動車会社の役目としては、ある程度、時系列でどういう変化をしていくのか明確にしながら、サプライヤーとともに新しいモビリティ時代に移っていこうと。今、それは個社によって違うので、一律ではなかなか難しいところですけど。1つひとつサプライヤーとワンバイワンで話をしながら今、進めている状況」

マツダも、去年11月に電動駆動ユニットの開発・生産に向けた協業をスタートさせました。

マツダ 丸本明 社長
「広島で生まれて、広島に育てていただいた企業としては、大きな責任の1つに考えていますので、お取り引き先のみなさんとともに成長していきたい」

2050年、カーボンニュートラルの実現に向けて各国で自動車の環境規制が先行する中、日本における技術の多様性こそが強みだと訴えます。

日産自動車 内田誠 社長
「やはりマスメリットにつながっていかないと競争力につながらない。ここからが転換期だと思っていますので。こういった中、業界で協業をしながら競争力をつける。そして、ひいては、それが日本のカーボンニュートラルにつながるっていうことを、自工会が引っ張ってやっていくことだと思っています」

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