「教育と信仰」巡り最高裁初判断の民事訴訟記録も廃棄 神戸地裁「特別保存に考えが及ばなかった」

神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 宗教上の理由で、剣道の実技授業を拒否した生徒を退学処分にしたのは違法-。「教育と信仰」を巡り、最高裁が初めてそんな判断を示した1996年の民事判決の訴訟記録についても、神戸地裁が廃棄していたことが分かった。「エホバの証人」を巡る訴訟で、判例集にも載っている。最高裁は、神戸地裁が廃棄した理由について「特別保存に考えが及ばなかった」とした。

 全国の重大少年事件記録などが廃棄された問題に絡み、最高裁が調査していた。

 訴訟は、キリスト教系の宗教団体「エホバの証人」の信者だった男性が、神戸市立工業高専1年生だった90年、聖書に「戦いを学ばない」と書かれていることなどから「宗教的信条と相いれない」として体育の授業を拒否。これに対し、校長は体育の成績が足りないとして進級させず、翌年も男性が剣道を拒むと退学処分にした。

 男性はこの処分が違法だとして提訴し、神戸地裁は「神戸高専は義務教育ではなく、原告は自由意思で入学したのだから、内部規律で権利が一定の制約を受けるのはやむを得ない」とし原告の請求を棄却した。

 しかし、二審判決は「退学処分は不利益が余りに大きすぎて違法」として原告逆転勝訴を言い渡す。

 その後、最高裁は96年3月、「信仰上の教義に反する行動を強制するもの。退学処分は裁量の範囲を超え違法だ」との初判断を示した。

 最高裁の報告書は、廃棄の経緯について次のように説明した。

 担当職員が事件番号と備考欄を記した廃棄目録を作成した。その後、保存期限のみをチェックして廃棄処理を進めていた。「廃棄目録には具体的な事件内容が書いていないので、特別保存について考えが及ばなかった」としている。

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