メトロノース鉄道に乗って行く週末のプチお出かけ〜コールドスプリング編〜

メモリアルデーとともに本格的な行楽シーズンが到来。日帰りディストネーションとしてニューヨーカーに人気のパトナム郡コールドスプリングを訪ねてみた。(文・取材/加藤麻美)


ハイキングにショッピング

魅力いっぱいの川沿いの村

ハドソン川ほとりの風光明媚な村、コールドスプリングへはグランド・セントラル・ターミナル発のメトロノース・ハーレムライン(ポーケプシー行き)を利用する。

車窓からハドソン川を眺めたいなら、進行方向に向かって左側の座席を確保すること。ヨンカーズ、タリータウン、ピークスキルなどを経て1時間10分ほどで目的地に着く。到着ホームを(北に向かって)歩いて行くとすぐに標識がありそのまま道なりに行けばメインストリートに出る。小さな花壇の前にトイレを併設したインフォメーションセンター(メモリアルデーの週末から営業開始・併設の公衆トイレは年中無休)があるので、ここでマップをゲットしよう。

コールドスプリングはマンハッタンの北50マイルに位置

インフォメーションセンターとハドソン川を背にフィリップスタウン方向に一直線に延びるのがメインストリート。ビンテージショップやレストラン、ギフトショップ、ブティックなどが半マイルにわたって軒を連ねている。ただし、ほとんどの店が午前11時〜正午開店なので、現地に早く着いた場合はメインストリートの脇道からアクセスできるハイキングコース(P5参照)を歩いてみるとよい。1時間ほどで往復できるし、帰路にコールドスプリング駅に通じる道を選べば、ハドソン川岸までは線路下の歩行者用トンネルを抜けて2〜3分ほど。対岸に広がる山々の景色を眺めているうちにいい塩梅に喉も乾きお腹も空くだろう。メインストリートのランチスポットはフレンチビストロやベーカリー&カフェ、ピッツェリア、食事もできるワインバーなどバラエティ豊か。気分に合わせて選ぼう。

コールドスプリング名物
ビンテージショップ巡り

ハドソン川流域でも有数のアンティークタウンとして知られたコールドスプリング。以前はコンディションの良い19〜20世紀初頭の家具などが見つかったが、現在はホリデー用装飾品、インテリア雑貨、食器、ジュエリー、古着などの小物を中心とした品ぞろえ。それでも各店ごとに特徴があり、ニューヨーク市内のビンテージショップと比べて価格も手頃(P4参照)だ。他にも世界各地から厳選した手作りワインの店やハドソンバレー産のチーズ専門店、ドライフラワーや文具を集めたセレクトショップなどユニークな店がある(コールドスプリングの公式ウェブサイトcoldspringny.gov)。


History of Cold Spring

ネイティブアメリカンが1600年代から水路として利用していたこの土地に最初の入植者が住み着いたのは1730年。現在のファーネストック州立公園に近く、木材や鉄鉱石などの天然資源にも恵まれていたことから1800年初頭にはハドソン川沿いに交易用の小さな集落を形成。1818年にはウエストポイント鋳造所が設立され米国でも有数の鋳物工場として隆盛、鋳造所への労働者流入に伴い住宅や商店、教会も増え、1846年に村として法人化された。19世紀後半になると、風光明媚な環境を好む芸術家や作家、名士らが競って住み着いたが、1911年の鋳造所閉鎖により次第に寂れた。第二次世界大戦後はハドソン川流域への企業進出やニューヨーク市のベッドタウンとして再興。1973年に連邦歴史地区に指定された。

ここだけは行っておきたい!おすすめVintage Shop

コールド・スプリング・アンティークス・センター

雑然とした店内にはディーラーごとに小さな展示スペースが設けられており、雑貨、アクセサリー、古着、軍関連品、各種メモラビアが細々と陳列されている。なかにはガラクタにしか見えないものも多いが、こういう店にこそ「掘り出し物」が隠れているのだ。

Cold Spring Antiques Center
77 Main St., Cold Spring, NY 10516
coldspringantiquesvault.com


ビンテージバイオレット

コールドスプリングのビンテージショップの中でもひときわ洗練された高級感漂う店。状態の良いビンテージドレス、コスチュームジュエリー、家具、ティファニーグラスのランプや銀食器、絵画、古書など店主が注意深くキューレートした品々が並ぶ。

Vintage Violet
113 Main St., Cold Spring, NY 10516
vintageviolet.com


ワンス・アポン・ア・タイム

おもちゃや人形、イースターやクリスマス用装飾品、コスチュームジュエリー、絵葉書などが中心。カテゴリーごとにガラスケースの中に整然とディスプレイされており見やすい。圧巻はコレクター垂涎のアンティークドールが所狭しと集められた「ドールハウス」。

Once Upon A Time
101 Main St., Cold Spring, NY 10516


ビジューギャラリーズ

専門分野が異なるアンティークディラーが集まったギャラリー形式の店。品揃え、コンディション共良く見応えがある。手前には中南米の刺繍をあしらったドレスやクッション、編み込み模様のバッグ、ブロックプリント生地のドレスを集めた店も。

Bijou Galleries
50 Main St., Cold Spring, NY 10516
bijougalleries.com


アンティークアレー

うなぎの寝床のような店内にディーラーが集まった店。食器、インテリア雑貨、装飾品、食器、照明器具、古着、コスチュームジュエリーなど。店内奥の店はアールデコ関連品が、入って右にある店はベークライトのアクセサリーや20世紀初頭のモダンアート関連品が充実。

Antique Alley
93 Main St., Cold Spring, NY 10516


ダァムエイジドビンテージ

2020年6月にオープンしたビンテージドレス専門店。ファッション業界で長く仕事をしてきたという店主が世界中から買い付けたビンテージドレスと、グッチやシャネルなどの高級ブランドバッグ、キャンドルや食器などインテリア雑貨を販売。

DamnAged Vintage
109 Main St., Cold Spring, NY 10516
damnagedvintage.com


なに食べ@コールドスプリング
〜紹介するのはほんの一例です〜

ハドソン・ヒルズ・カフェ

レモンリコッタパンケーキ、ハドソンバレー産の卵やソーセージ、チョコレートシナモンバブカを使ったフレンチトーストなどシンプルだが、こだわりが感じられるメニューを出す。いつ訪れても混んでいる人気の店。

Hudson Hil’s Cafe
129-131 Main St., Cold Spring, NY 10516
hudsonhils.com


リンコン・アルヘンティーノ

帰りの列車を待つ間に行きたいパパ&ママ経営の店。売り切れご免のエンパナーダはスパイシーでお持ち帰りしたいほど。バナナストラッチャアイスクリームやフランなどデザートもおいしい。手作り感あふれた店内は居心地抜群。

Rincon Argentino
21 Main St., Cold Spring, NY 10516
facebook.com/rinconargentinocoldspring/

ウエストポイント鋳造所保護区でコールドスプリングの歴史に触れる

川沿いの集落を繁栄に導き、南北戦争時は北軍にパロット銃などを提供したウエストポイント鋳造所跡を見学できるウエストポイント鋳造所保護区(WPFP:West Point Foundry Preservation)は、90エーカーに及ぶ森林地帯の中にある。商業開発を防ぐためにシーニック・ハドソン・ランド・トラストが1996年に同地を取得、現在は公園として一般に開放している。保護区内のトレイルは、お散歩レベルのらくらくコース。

鳥のさえずりを聴きながらの森林浴は気分爽快だ。ここではP3で述べたようにメインストリートからのルートを紹介する。

スタート地点

❶メインストリートにあるインテリアショップ「アーキペラゴ・アット・ホーム(Archipelago At Home)」の角を(フィリップスタウン方向に向かって)右折、ケンブルアベニュー(Kemble Ave.)をフェンスを右手に見ながらファウンドリー入江(Foundry Cove)方向に歩く。

❷入江に突き当たる手前左に駐車場があり、目の前に「WPFP」の標識が見える。その左にウエストポイント鋳造所についての説明と付近を俯瞰したマップを掲示したインフォメーションボードがあるのでチェックしておこう。

ウエストポイント鋳造所跡

❸約2マイルのトレイルは、当時の線路跡に沿って整備されている。

❹保護区の中心には1865年建立の事務所ビルディングがほぼ当時のままの姿を留めている。ピクニック用のベンチもあるので、お弁当を持参するならここで食べるとよい。

❺36フィートの実物大の水車模型(Back Shot Water Wheel)

❻水車模型の脇の階段を上ってしばらく歩くとバタリー池(Battery Pond)を見下ろすデッキがある。池は水草に覆われ判然としない。

ファウンドリー・ブルック・ダム

❼デッキを過ぎると道は二手に分かれるが、右方向に坂を上がっていくと右手に小川、ファウンドリーブルック(Foundry Brook)が見えてくる。

❽ルート9Dの橋の下の滝(Foundry Brook Dam)は地元住民の隠れた人気スポット。夏には涼を求めて滝の飛沫浴びに来る人も多いそうだ。足元が滑りやすいので十分注意すること。

❾再び坂を戻り、赤い標識に沿って入江方向に戻る。黄色い標識の合流地点の先にインフォメーションボードがある。

木の幹に取り付けられたトレイルの
標識を目印に歩こう

帰路

➓往路で来た道を戻るのもよいが、入江沿いを歩いていけばメトロノースの線路脇の道につながる。コールドスプリングの駅が見えてくる。


足を延ばせばこんなスポットも廃墟となった火薬城を訪ねる

バナーマン島ツアーfromコールドスプリング

コールドスプリングはポレペル島(通称バナーマン島)やその他の名所を巡るハドソン川カヤックツアーの出発地点。ハドソン川と山に抱かれた7マイル3時間の旅は心身のリセットに最適だ(参加費:100ドル、 対象:カヤック経験者。バナーマン島には上陸しない)。

各種ツアーの詳細と申し込み:hudsonriverexpeditions.com

バナーマン島

19世紀の武器商人フランシス・バナーマンが黒色火薬を含む在庫品を保管する城建設用に購入した島。「バナーマン島工廠」と呼ばれた城は1969年の火災で崩れ落ち、現在は廃墟と化している。
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