【中国】高まる物流需要をつかめ[運輸] 日系企業が海南自貿港活用(3)

NX国際物流(中国)の海南事務所が入居するビル(同社提供)

自由貿易港として建設が進む海南省に、日系物流企業として初めて進出したのがNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)だ。免税品の販売が急増しているほか、医療特区の建設加速で今後は医薬品・医療機器の荷動きが活発化するとみて、いち早く物流需要をつかむ体制を整えている。物流インフラの充実も追い風に、海南市場の拡大を商機ととらえる物流業界の動きが活発化することも考えられる。【畠沢優子】

NXHDの中国現地法人、NX国際物流(中国)は2022年7月、広東省の同社広州支店が管轄する形で海口市に事務所を設けた。まずは政府や物流業界の関係者から情報収集を行うことから始めている。

海南自由貿易港(海南自貿港)の政策にどういったメリットがあるのか、と様子見の日系企業が多い中で、NX国際物流(中国)はいち早く進出した。

NX国際物流(中国)広州支店で華南地区統括部長を務める武田大輔氏は、「できるだけ早く拠点をオープンしたかった」と話す。今回の海南省進出に当たり、同社は「小さく出て大きく育てよう」とのコンセプトで早く現地に赴き、マーケティングやリサーチを行い、顧客が出てくるころには必要な情報を提供し、顧客と一緒にビジネスを育てていこうという考えだ。

NX国際物流(中国)が海南での商機を見いだしたのは、20年6月に中央政府が発表した海南自貿港の全体計画だという。

自貿港の重点産業には、観光業、現代サービス業、ハイテク産業、熱帯農業などが入り、今後の発展を後押ししていく方針。海外からの輸入製品を関税ゼロとするほか、企業所得税(法人税)を15%に引き下げるといった政策を適用。ビジネス目的の短期滞在の条件を緩和し、就労ビザも取得しやすくする。優遇策は25年までに一部で導入し、35年までには貿易、投資、資本の移動、人の往来の自由などを実現する——といった内容だ。

全体計画の発表に伴い、海南の経済発展は加速していくはず。「経済発展に伴い物流需要は必ず生まれる。物流企業として商機を取り込むチャンスだ」(武田氏)とみて、拠点設置に動いた。

■ハードの整備進む

実際、商機に対応できる物流インフラが整いつつある。

武田氏によると、中国の地方都市では空港の横に倉庫を据え付けただけの昔ながらの物流施設が多いが、海口の空港貨物ターミナルは22年7月に移転し、近代的な貨物ターミナルに生まれ変わった。貨物ラックや自動搬送システム、冷蔵冷凍倉庫もある。将来の成長に対応しうるハイスペックな貨物ターミナルになったという。

武田氏は「港湾や空港周辺の施設関連は、確実に増強されていると感じる」と強調する。

NX国際物流(中国)が現在海南で手がけている物流事業は、免税店で販売されるアパレルや化粧品・香水などハイファッションを取り扱うものがメイン。今後も免税品販売の増加に伴い、国際物流、省内物流、保税区向けの物流需要を見込む。実際、日本でも「消費品を海南省に送り込みたい」という声が聞かれるという。

海南の医療特区の存在もビジネス拡大のチャンスだ。医薬品・医療機器の輸送は品質が肝。日本のきめ細かいサービス、輸送品質は信頼が高い。武田氏は、「医薬・医療品は、人の命を運ぶことにもつながる。そこにわれわれの商機がある」と力を込める。

<メモ>

海南省政府は物流業の活性化を促すことで、海南自由貿易港の発展を進める方針だ。

同省は22年6月に発表した第14次5カ年計画(2021~2025年)期間の現代流通システムの整備に向けた実施計画の中で、25年までに物流業の売上高を1,300億元(約2兆5,600億円)規模とする目標を掲げた。22年(992億700万元)から3割増える計算。26年以降は成長速度を速め、35年には25年比2.5倍の3,200億元とする。

物流にかかる総コストが域内総生産(GDP)に占める比率は25年に13.2%、35年には10%前後に引き下げる目標だ。22年の20.9%から半減を目指す。

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