
鹿児島県が公募して集まった234件の鹿児島港本港区エリア(鹿児島市)の利活用アイデアを巡り、エリアの全体像を決める県利活用検討委員会に波紋が広がっている。前提としているドルフィンポート(DP)跡地への県新総合体育館の賛否が割れ、内容も多岐にわたるためだ。
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「子ども連れで楽しめるテーマパークを」「リゾートホテルやサウナ施設、海が望めるレストランがほしい」「中途半端な建物を整備するより公園にすべきだ」-。寄せられた234件は計996ページに及び、多種多様だ。桜島と鹿児島湾を望む一等地の景観が損なわれるとの理由などから、DP跡地への体育館整備に反対・否定的意見も全体の3割を超えた。
そもそもアイデアはDP跡地への体育館整備を前提に募った。DP跡以外の本港区エリアに、どのような機能を持たせるか年度内に決める県検討委の参考にするためだ。
県検討委は、これまで(1)エリア一帯の土地利用を規制する港湾計画(2)DP跡地に新体育館を整備する県基本構想(3)県本港区グランドデザイン-の三つを前提に議論を重ねてきた。箱もの整備などを想定したアイデアを採用するとなれば、港湾計画の変更が必要となる。前提は崩れ、議論を根底から揺るがしかねない。
「意見は募集したが、前提を覆すと収拾がつかない」「実現性や運営を考えていないものがある」。アイデアの取り扱いを協議した19日の検討委幹事会では委員から持て余す声が相次いだ。
最終的には、座長の木方十根鹿児島大学工学部長が「できるだけ多くの考えを吸い上げるべきだ」と委員に提案。三つの前提条件にとらわれず、柔軟に議論する方向で一致した。
これに県幹部は「今後の検討委の議論がどうなるのか全く読めない」と困惑する。別の幹部も「体育館の位置や(DP跡地に隣接する)保全方針の緑地の面積が一部変更になる程度のことはあるだろう」との見方を示す。
一方、鹿児島市の幹部は議論の流れを前向きに捉える。市が構想する多機能複合型サッカースタジアム整備には、港湾計画の見直しが不可欠になり、これまでも変更を求めてきたからだ。「厳しい状況に変わりはないが、スタジアムにとってはプラスだ」と話した。
