伊藤忠、eVTOLドローンによる血液製剤輸送に関する実証実験を実施

同プロジェクト概要

同プロジェクトは、伊藤忠商事が2022年3月に資本業務提携・販売代理店契約を締結したドイツのWingcopter GmbH社(以下:Wingcopter社)製のドローンを使い、地方独立行政法人東京都立墨東病院を共同研究者、ANAホールディングス株式会社(以下:ANAHD)を共同運航者とする。温度管理が必要なため、一般的なマルチコプター型のドローンでは取り扱いが難しいとされてきた血液製剤について、同じく達成が難しいとされてきた全自動による高速での長距離安定移動の可能性を品質管理面と共に検証するもの。

今回本邦では初となるWingcopter社の最新のeVTOL型ドローン「Wingcopter198(W198)」を使用し、遠隔地への血液輸送を想定した長距離・長時間飛行を複数回計画、実施した。

厳密な温度管理が求められる血液製剤を格納するドローン用の保冷容器は、医療向け定温輸送容器の製造・販売に実績のある株式会社スギヤマゲンが協力した。また、2種類の血液製剤を調達した墨東病院から実証実験を行ったフィールドまでの往復(片道約75km)の血液製剤の輸送容器並びに輸送に関しては、それぞれ東邦ホールディングス株式会社、株式会社セルートが協力した。

Wingcopter社は、ドローンを通じて世界中の国々や地域の生活を向上させることを企業理念に2017年に設立。以来、医療品分野を中心に、アフリカでの医療品配送ネットワークの構築や、日本を含む世界各地での実証実験を通じてドローン物流の事業化を目指している。同社の安定した高速・長距離飛行が可能なドローンの利用は、医療品や医療資機材に限らず食料品や日用品等の配送も可能とし、特に自然災害が多い日本では離島や山間部、被災地でのBCP対応への貢献が期待されるという。

日本では、2022年12月の改正航空法によりレベル4(有人地帯における目視外飛行)が解禁され、ドローンの活用領域が大きく拡大した。今回実証実験の対象とした血液は、その性質上輸送にあたっては緊急性および定時制の両面が求められ、その物流を支えるインフラや人員の確保、血液の安定供給と品質維持が大きな課題となっている。

今回の実証実験では関係者の医学監修・協力のもと、現場での運用を見据え、実践的な手法・機材を用いた輸送フローを検証することで、有効な物流手段の一つとしてドローンが様々な社会課題の解決に大きく貢献することを示していくとしている。

伊藤忠商事は、中期経営計画の基本方針に「『マーケットイン』による事業変革」、「『SDGs』への貢献・取組強化」を掲げ、ビジネスモデルの進化や生活基盤の維持・環境改善等「SDGs」の実現を目指すという。今回の実証実験を通じて、高性能なティルトローター式ドローンW198を利用してのドローン配送ネットワークの構築を進め、多様なニーズ・社会課題に対応したサービスの提供を目指していくとしている。

同プロジェクトにおける各社役割

同プロジェクトで使用したドローン

▶︎伊藤忠商事

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