カーボン・オフセットで環境に配慮 県南部の梅干し会社やスーパー、和歌山

カーボン・オフセット認証の商品を持つ「トノハタ」の殿畑雅敏社長(和歌山県みなべ町西岩代で)

 二酸化炭素などの温室効果ガスについて、自社の排出量に見合った分を他社の削減活動に投資して埋め合わせる「カーボン・オフセット」に取り組む企業が和歌山県紀南地方でも出てきた。削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度を使っている。

 森林管理のほか、再生可能エネルギーや省エネ設備によって、排出削減や吸収量の増加につながる事業でクレジットを「生み出す側」と、自身の事業で生じる排出量をクレジット購入で相殺(オフセット)する「買う側」がある。

 制度の事務局(東京都)によると、3月15日時点で全国で975件の排出削減、吸収プロジェクトが登録されており、これまでに削減または吸収された二酸化炭素889万トン分がクレジットとして認証された。

■クレジットを購入

 みなべ町西岩代の梅干し製造販売業「トノハタ」は2009年にカーボン・オフセットの認証を取得。対象商品について、梅の栽培から商品の流通までに生じる二酸化炭素の排出量を算出。その量を上回るクレジットを購入し、相殺している。

 クレジット購入費は販売価格に転嫁しておらず、純粋に地球環境への投資をしていることになる。対象商品には認証マークを記して「地球に優しい南高梅」と書いた説明文を同封しているが、消費者からの反応は薄いという。殿畑雅敏社長(62)は「認証マークの認知度をいかに高めていくかが重要。価値を見いだしてもらえるようになれば、自然と広まっていくはず。負担ではあるが、それでも続ける意義はある」という。

 上富田町の朝来駅近くや白浜町内でスーパーマーケットを運営する岸商店も「買う側」として制度の活用を始めた。昨年8月下旬、自社の食材配送車両が1年間に排出する二酸化炭素の排出量を算出。今年2月に排出量20トン分のクレジットを購入し、その排出を相殺した。

 相殺のために購入したのは、他県の食品製造業者が省エネ設備を導入することで生み出したクレジット。

 岸敏明代表(58)は「この取り組みによって排出する二酸化炭素がなくなるわけではないが、できることからやっていきたい」と話す。岸商店は排出量削減の取り組みとして、15年に太陽光発電、19年に電気自動車を導入している。

■クレジットを創出

 クレジットを「生み出す側」として温室効果ガスの削減に取り組むのは田辺市新庄町の「山長林業」だ。

 田辺市中辺路町野中にある管理する山林で、計画的な植林や間伐をし、08~21年で二酸化炭素1400トン分のクレジットを創出。

 栗田宗登・取締役総務部長(50)は「地球温暖化は企業だけでなく、一人一人の問題。環境への興味が増し、クレジットを買いたいという人が増えれば、(クレジットを)増やそうという話になっていく」と話す。

 クレジットは「木造住宅建築時に発生する二酸化炭素の排出量相殺に活用してもらいたい」とし、環境に優しい家づくりの提案を続けていくという。

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