3年ぶりの日本レースに挑むマーデンボロー、走り慣れた富士で24時間総合優勝を狙う。ファンへのメッセージも

 スーパー耐久シリーズの一戦として6度目の開催となるENEOS スーパー耐久シリーズ2023第2戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』。今年も超豪華な顔ぶれが揃っているおり、HELM MOTORSPORTS GTR GT3からはヤン・マーデンボローが3年ぶりに日本のレースに参戦する。

 マーデンボローは2016年から日本のシリーズに参戦を開始し、スーパーGTではGT500クラスに4シーズン参戦。2018年第6戦SUGOで3位表彰台を獲得したほか、フォーミュラカーのカテゴリーでは2016年に全日本F3選手権でランキング2位、2017年には全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦を果たすなど、日本のモータースポーツカテゴリーで欠かせない存在として活躍していた。

 そんなマーデンボローは、2020年いっぱいでスーパーGTへの参戦を終了し、ここ数年はさまざまな活動をしていたという。「フォーミュラEのGen3車両の開発テストに携わっていたし、GT3やGT4、LMP車両のテストも担当していた。もちろんレースにも参戦していて、ラリークロスにも挑戦した」と富士24時間の現場で語ったマーデンボロー。

 すでに今年9月には彼を題材にした映画『グランツーリスモ』の上映が開始される。マーデンボローはその制作にも深く関わっているとのこと。

「最近は僕が題材になっている映画の制作にも関わっていた。スタントドライバーとして、ドライビングシーンは僕が担当しているし、プロダクションやディレクターとたくさん打ち合わせをして、ほとんどの時間をそこに費やしている」

 なお今回の富士24時間は、マーデンボローにとって久しぶりの日本でのレース参戦になる。そのきっかけについては「1カ月くらい前の話だ。平木兄弟(HELM MOTORSPORTSの平木湧也と平木玲次)が僕のところに連絡をくれて、そこから参戦の話が進んでいった」と振り返った。

 日本に来ること自体も久しぶりとのことで、「羽田空港に着いて飛行機を降りたときに『日本に帰ってきた!』と思ったよ。またここに戻ってくることができて本当に嬉しい。富士スピードウェイに来ると、いろいろなドライバーやチームスタッフの人が僕に気づいてくれて、僕のところ挨拶に来てくれたんだ。本当に素晴らしい。フォトグラファーやジャーナリストもそうだし、他メーカーや他チームのスタッフも分け隔てなく僕のことを迎えてくれて、このレースに出ることができて本当に良かった」と、満面の笑みをみせていた。

2023スーパー耐久第2戦富士 ヤン・マーデンボロー(HELM MOTORSPORTS GTR GT3)

■初の富士夜間走行で感じた海外サーキットとの違い。日本のファンにメッセージも

 今回の富士24時間の舞台となる富士スピードウェイは、マーデンボロー自身も走行経験豊富なサーキットのひとつ。しかし、富士スピードウェイでの夜間走行は今回が初めてとなる。「木曜日の夜間練習走行で6周ほど走ったけど……ものすごく暗いなと思った! もちろんニュルブルクリンクは別格なんだけど、ル・マンやスパ(フランコルシャン)と比べると暗い印象だった。そのなかでもトップタイムを出すことができたし、今回はドライタイヤがブリヂストンに変わるから、みんなにとって初挑戦になる」と意気込むマーデンボロー。

「富士スピードウェイはよく知っているサーキットだし、チームのレベルも高い。さらに昨年の富士24時間も優勝していて、クルマも僕がドライブしたことのあるニッサンGT-RニスモGT3だ。5人のドライバーとも力強いメンバーが揃っているから、どうなるのか楽しみだ」

 もちろん狙うは富士24時間の総合優勝。HELM MOTORSPORTSにとっては2連覇がかかる大事な1戦となる。これまでも数多くの耐久レースに参戦してきたマーデンボローは「24時間レースにおいて一番重要なのはクルマを壊さないことだ」と断言する。

「もちろん戦略や燃費など、さまざまな要素が重要になるけど、一番重要なのは接触などでクルマを壊さないことだ。(スーパー耐久は)ホンダ・フィットとFIA-GT3マシンが同じコースを走ることになる。時速100km/h以上で走っているときは常に周りに目を配り、注意を払わないといけないと思っている」と、スーパー耐久ならではの混走状態を警戒している様子だ。

 さらにマーデンボローが最後に日本で走ったときは、コロナ禍の影響でサーキット内でのファンサービスもさまざまな制限が設けられていたが、今年はほぼ通常状態に戻ってのレース開催となる。これにはマーデンボローも心から喜んでいる様子で、ファンに向けて以下のように語ってくれた。

「コロナ禍に入ったとき(スーパーGTでは)最初の数レースは無観客で開催されていた。あのときはすごく寂しかった。だけど、今は通常に近い状態に戻ってきたことを嬉しく思う。特に子どもたちにとって、サーキットに来てレースの魅力に直接触れられるということは、すごく重要なことだからね」

「僕が富士24時間に参戦することを発表してから、日本のファンからすごくたくさんのメッセージをもらって正直驚いたよ。この週末はたくさんのファンと再会して、サインをしたり、一緒に写真を撮ったり、交流したいと思っている。しばらく日本を離れていたから、僕の日本語レベルが落ちてしまっているけど、可能な限りみんなと会いたいね!」

 日本では約3年ぶりのレースとなるマーデンボローだが、最後には「僕のレースキャリアの半分は日本で生まれてきたから、たくさんの思い出がある」とコメント。慣れ親しんだ富士スピードウェイで、どのような走りを披露するのか目が離せない。

2023スーパー耐久第2戦富士 HELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次/ヤン・マーデンボロー/ショウン・トン)

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