横尾忠則さん、自作小説「原郷の森」の世界を表現 神戸で展覧会「意味考えず、無心で見て」

小説「原郷の森」の世界を表現した展示空間=神戸市灘区原田通3、横尾忠則現代美術館(撮影・風斗雅博)

 世界的美術家、横尾忠則さん(86)=西脇市出身=の文筆家としての魅力に光を当てる展覧会「横尾忠則 原郷の森」(神戸新聞社など主催)が27日、神戸市灘区原田通3、横尾忠則現代美術館で開幕する。横尾さんは26日の関係者向けイベントに来館し「意味を考えず、無心で見てほしい」と呼びかけた。

 テーマは昨年3月に出版した500ページ超の小説「原郷の森」。横尾さんの分身といえる主人公Yが三島由紀夫らに導かれ、ピカソやデュシャンら約280人と芸術や人生を語り合う。内容と見合う絵画など、自作約170点と組み合わせて構成する。

 森に生い茂る木の間から日が差すような空間を照明で演出し、絵の隣に登場人物のせりふを配した。会場には、小説中の会話部分を兵庫県立ピッコロ劇団の俳優陣が情感たっぷりに朗読する音声が流れ、独特な世界観を演出する。

 横尾さんは「小説の文章を『見て』絵を『読んだ』感覚に襲われた。僕にとって初めての体験」。同館のイベント出席は新型コロナウイルス禍で困難になっていたため約3年半ぶりで、人との面会を控えた日々を振り返り「今日は虚構から現実に戻ったような不思議な感じ」とも話した。

 8月27日まで。午前10時~午後6時。月曜休館(ただし、7月17日は開館し、翌日休館)。一般700円、高校生以下無料など。横尾忠則現代美術館TEL078.855.5607(小林伸哉)

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