綱張る覚悟、肌で感じる 朝乃山雪辱ならず

 朝乃山が2年ぶりに本場所の土俵で横綱照ノ富士と向き合った。過去5戦全敗と一度も勝てていない横綱に対し、持てる力を出し切ったが、貫禄を見せつけられる結果となった。「横綱の相撲は『絶対に負けない』という気持ちが出ている。小手投げでもそれが伝わった。その勢いにも負けた」。綱を張る覚悟を肌で感じ、朝乃山は再び前を向く。

 元大関が結びの一番の土俵に上がると、待ってましたとばかりに大歓声が上がった。

 右の相四つの照ノ富士には、自身が新大関の2020年7月場所から5連敗。当時は「情けない。上にいくために必ず勝たないといけない相手だ」と悔しさをかみしめていた。ただようやく迎えた雪辱の好機は厳しい結果だった。

 12日目の大栄翔戦に続き、三役以上にはね返された。土俵下の浅香山審判長(元大関魁皇)は「感覚が戻り切っていないのではないか」と指摘。本格的に上位陣と胸を合わせるようになったのは春巡業からで、ブランクの影響は幕内後半戦で浮き彫りになった。

 取組後「思い切ってできた。自分では精いっぱいやったつもり」と語った朝乃山だったが、「まだまだ差が多くある」と、今の自分の力不足を痛感している様子も見せた。

 優勝争いでは照ノ富士、大関昇進が濃厚な霧馬山に続く3番手に後退。14日目は同じ時期に大関を務めていた正代と戦う。大きな黒星を糧にして、来場所につながる相撲を見せることができるか。復活の途上にいる元大関の地力が試される。

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