未来の富山湾は南方生物増 魚津水族館、隠岐調査から予測

隠岐の島で海中の生物を調べる魚津水族館の調査員

 地球温暖化に伴って南方系生物が増加する富山湾の未来図を予測しようと、魚津水族館(富山県魚津市)は、同湾に流れ込む対馬暖流の上流に位置する隠岐の島(島根)で調査を行った。富山での記録がない21種の魚をはじめ、発見が珍しい希少生物も数多く確認。海水温の上昇が続けば、生息域が北上する可能性があり、同館は「隠岐で見られた生物が今後、富山で増えるかもしれない」と推測する。

 南方系の生物は暖かい対馬海流に乗って北上し、富山湾に流れ込むと考えられている。魚津水族館によると、近年の海水温上昇に伴い、秋にだけ見られた南方系の回遊魚が越冬して水温が低い時季にも確認されるほか、カミナリベラやケラマハナダイなど初記録の魚も増加。ダイオウイカやリュウグウノツカイの報告は当たり前になっている。

 将来の富山湾にいる生物を予想する手がかりを探ろうと、2022年9、10月に同館の稲村修前館長と木村知晴飼育員が隠岐の島で調査を実施。海中の生物の種類数を調べ、20~22年に魚津市沿岸で行った調査の結果と比較した。

 隠岐では、富山で記録のないキビナゴやコロダイ、イトフエフキなど21種を確認。富山では珍しいイトヒキベラやトラギスなど10種類も多く泳いでいた。甲殻類20種のほか、軟体動物45種、棘皮(きょくひ)動物12種も隠岐のみで見られた。

 島根や日本海で初確認された生物も30種ほどあった。生物それぞれの生息域の北限が北に延びているといい、木村飼育員は「ベラ類、ハゼ類、棘皮動物などが増加傾向にある。富山湾までやって来る数が増え、さらに繁殖することも考えられる」と説明する。

 隠岐では毒のあるトゲを持つウニ類が多数見つかった。仲間のガンガゼとアラサキガンガゼは、22年12月から23年5月にかけて魚津港南地区で生息が確認されており、富山湾内で危険生物が増加することへの懸念が高まっている。木村飼育員は「海洋環境はどんどん変化している。富山の生物がどのように変わっていくのか調査を継続していきたい」と話した。

 同館では28日まで、隠岐の島調査の結果を紹介する企画展を開いている。

魚津水族館で開催中の企画展をPRする木村飼育員

© 株式会社北日本新聞社