佐世保市「意識薄かった」 認定こども園と認可保育園に改善勧告 不適切保育対応に残る不信感

市が保育園に出した改善勧告の文書のコピー(画像の一部を加工しています)

 長崎県佐世保市の認定こども園と認可保育園で不適切保育があったとして市が両園に改善勧告を出した問題で、両園は今月、原因検証や再発防止策に関する報告書を市に提出した。市は不適切保育への「意識が薄かった」などと不手際を認めているが、市の対応の遅さなどへの保護者の憤りや不信感は今も消えていない。
 こども園を巡り、市は昨年4月以降、複数の保護者らから被害の相談を受けていた。しかし、市の対応は聞き取りなどによる事実確認にとどまり、防犯カメラの有無自体を確認していなかった。
 市がカメラの存在を把握したのは今年1月23日。保護者が被害を訴えていた昨年4月から11月中旬までの映像は上書きされて消えていた。市は「当時は映像を見るという視点(考え)がなかった」と釈明する。
 保護者らは、認定された「園児を怒鳴る」「腕を引っ張る」行為だけでなく、園児への暴力なども訴えていた。しかし市は「保育士本人が認めていない」として、認定しなかった。市は「(当時ビデオ映像を見ていれば)何か(不適切保育の)確認ができていたかもしれない」と対応の不手際を認めた。
 被害を訴えていた保護者は市の対応に「怒りを通り越してあきれている。納得のしようがない。親は園を信じて子を預けるしかない。改善勧告だけでは軽い」と声を震わせる。保護者の目には、「子どもを一番信用していないのは市だった」と映っているという。
 一方、認可保育園では改善勧告後の園の対応に保護者から批判が出ている。
 園は改善勧告の文書をコピーして配布したが、「詳細が分からない」などの問い合わせが市に複数寄せられたため、園は説明文書を作成し先月末に配った。しかし、一連の問題後に子どもを退園させた保護者には配っていなかった。
 子どもが不適切保育の被害に遭い、退園させた保護者は「園は『もう退園者には関係ない』と考えているのではないか。まだ事案を軽く受け止めていると思う」と漏らす。園は「市への問い合わせは在園者からだと思った」などと弁明する。
 子どもが被害を受けているビデオの映像を見て言葉を失った保護者たち。改善勧告では「軽い」との思いは強い。その上で「ほかの園へのチェックなども徹底してほしい。(二度と)子どもたちが被害に遭わないように」と訴える。


© 株式会社長崎新聞社