体長15m超の巨大サメ、実在する古代アステカ神の化身だった!?『ブラック・デーモン 絶体絶命』見どころ解説

『ブラック・デーモン 絶体絶命』© 2023. Black Demon Movie, LLC. All rights reserved.

前代未聞の神秘実話系サメ映画

2023年もまた、新たなサメ映画が現れた。『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年)のエイドリアン・グランバーグ監督作、『ブラック・デーモン 絶体絶命』だ。

近年では『フォードvsフェラーリ』(2019年)や『フォーエバー・パージ』(2021年)に出演した、ジョシュ・ルーカスが主演を務めている本作。現時点では劇場公開前の作品ということもあり、あまりペラペラと内容を公開するわけにはいかないが、今回は目玉の巨大ザメ“ブラック・デーモン”を中心に、この映画を紹介していきたい。

古代アステカの神“トラロック”の化身

海底油田の視察とバカンスを兼ね、メキシコ沿岸部を訪れたポールとその家族。だが町にかつてのにぎわいは見られず、地元住民は一家を白眼視。ボートを借りて沖に出るも、閑散とした海上施設には2人の従業員しか残っておらず、設備もまともに稼働していない。それどころか平静さを失っていた2人は、現地に到着したばかりのポールへと、慌てて何事かを訴え始める。

困惑するポールが目撃したものは、突如として海中から飛び出し、今しがた家族が乗ってきたばかりのボートを操縦士ごと粉砕する、非現実的なまでに大きなサメの姿だった。

いわく、古代アステカの神“トラロック”の化身として現れた巨大ザメ、通称“ブラック・デーモン”は、自然環境を汚染する油田を憎み、復讐のために設備を襲撃しているのだという。

世迷いごとだと一笑に付すポールだったが、事実ブラック・デーモンは一家と従業員をつけ狙い、ときには謎めいた幻覚さえも用いて、施設の生き残りを追い詰める。さらには、絶体絶命の状況に追い打ちをかけるがごとく、海底には不祥事を隠蔽するための時限爆弾が仕掛けられていることが判明。タイムリミットは残りわずかとなっていた。

二転三転する事態に取り乱すポール。彼は巨大ザメと時限爆弾の脅威から、最愛の家族を守り抜くことができるのだろうか……。

メキシコに実在する巨大ザメ伝説を引用

本作に登場する巨大ザメ、“エル・デモニオ・ネグロ”こと“黒い悪魔(ブラック・デーモン)”は、なんと現地で実際に語り継がれている伝説のサメ。その全身は黒く、体長は15メートル以上とも。

もっとも、その実在を証明する写真の類いは一切見つかってはいない。ある者は太古の巨大ザメ、メガロドンの生き残りだとし、ある者はメラニン色素過剰を起こしたホホジロザメだとしている。ただし、「単なる漁師の大ぼらである」、「水面下を泳ぐジンベエザメの影を見間違えたものだろう」と、ブラック・デーモンの存在を懐疑的に捉える声も少なくはない。

とにもかくにも神秘的で、魅力的な伝説のサメ、それがブラック・デーモンなのであり、作中ではしっかりこの世に実在する巨大ザメとして、我々人類に牙を剥く。

神秘的かつダイナミックな巨大ザメの恐ろしさ

本作のブラック・デーモンは、前述の通り古代アステカの神トラロックの化身として登場。海上施設の従業員を幻覚で精神的に苛む、超自然的な怪物としても描かれている。そしてこの設定に付随し、作中にはたびたびトラロックの絵や像が顔を覗かせる。

正統派の巨大モンスター・パニック映画の系譜に位置しながらも、全体的にどことなくオカルトじみた雰囲気を漂わせている点は、(『ゴースト・シャーク』や『ジョーズ キング・オブ・モンスターズ』のような前例自体はあるにせよ)この手の巨大ザメ映画としては珍しいだろう。一方で、まるでメガロドンもののサメ映画かのように巨体を生かしてボートを突き上げたり、海底油田をめちゃくちゃに荒らし回ったりする様は、やはりダイナミックでもある。

さて、言わずもがな本作は“サメ映画”である。その辺り、いつものこととはいえ脚本・構成には粗削りな面も少なからず見受けられる。良くも悪くもジャンル映画には違いないが、サメの襲撃シーンのクオリティはなかなかだ。

果たして伝説の巨大ザメ“ブラック・デーモン”は、ホホジロザメやメガロドンに代わる、新世代サメ映画の主役となるだろうか。それはわからないが、この映画のサメが手強い怪物であることは確かだ。

文:知的風ハット

『ブラック・デーモン 絶体絶命』は2023年6月2日(金)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、池袋シネマ・ロサほか全国公開

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