浦和名物となった“奈良漬パウンドケーキ”幅広く人気 老舗のチャレンジ続く 「酒井のチーな」も大好評

幅広い世代に人気の奈良漬パウンドケーキ「パウナ」(右)と「酒井のチーな」

 埼玉県さいたま市浦和区の旧中山道沿いにある奈良漬の老舗・酒井甚四郎商店が昨年夏に発売した奈良漬パウンドケーキ「PAUNNA」(パウナ)が幅広い世代で人気を呼んでいる。同店は、明治初年創業。造り酒屋から直接仕入れた一級品の酒粕(かす)を4~5種類ブレンドして手作業で丁寧に作る奈良漬は、コクとまろみがあり、歯触りも絶妙で浦和の名物となっている。

 「若い世代にも奈良漬に触れる機会を増やしたい」と、数年前から関連商品の開発を行い、奈良漬瓜(うり)・キュウリ・ショウガを刻み、秘伝の酒粕に漬けこんだクリームチーズを組み合わせた「酒井のチーな」は酒のつまみとして好評。「奈良漬と甘いものを一緒に贈りたい」という利用者の声で、3年前から奈良漬を使ったスイーツ作りに着手した。

 だが、「当初は地元のお菓子屋さんとコラボして作りたかった」という同店の星由夏さん(37)の思いとは相反して、奈良漬は発酵食品のためにおいが残ることが懸念され、手を組む菓子店探しに難航。構想から2年後に現在、製造を手がける茨城県の菓子店が見つかりスタートラインに立つことができた。

 パウナは、パウンドケーキの生地に同店オリジナルの酒粕とクリームチーズを練り込み、味のアクセントに瓜の奈良漬のカットを入れた。酒粕の香りがほんのりと鼻から抜け、瓜のカリッとした歯ごたえと甘さと塩気のバランスも絶妙。シーズニング部分にも酒粕を使用し、香りにもこだわった。

 価格は1切れ432円(税込み)。発売から1年経ち、ターゲットにしていた若い世代だけではなく、幅広い層に好評という。「奈良漬や漬物自体に興味がなかった人たちに、パウナを通じて新たな食の魅力を知ってもらいたい」と星さんは期待を寄せていた。

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