入山法子に単独インタビュー 『明日カノ』シーズン2でソープ嬢役に「運命的なことを感じた」

現代社会に生きる女性のリアルな心情を描く人気漫画、『明日、私は誰かのカノジョ』(をのひなお)。昨年実写ドラマ化され、放送終了後には「明日カノ、ロス」の声がやまなかった。そんな本作の続編が、再び実写化されている。entax取材班は、MBS/TBSドラマイズムで放映を開始した『明日、私は誰かのカノジョ シーズン2』で、周りに流されて生きる“江美”を演じる入山法子に、ドラマに関する率直な思いを聞いた。

■「体を売ってお金を稼ぐという価値観を、まず、受け入れるのが困難でした」

「私でいいのかな」と入山は、出演依頼を受けた時の正直な気持ちを語ってくれた。

「シーズン1は10代や20代の女性たちにスポットが当たっていたし、ドラマの“色”のようなものがあったから、私(作品の)色に合っている? みたいな心配が、最初はありました」

シーズン2は、漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の『洗脳編』と『What a Wonderful World編』の実写化ドラマだ。メインキャラクターは2人。生活費や学費を稼ぐために高級ソープランド店で働く女子大生の留奈(茅島みずき)と、留奈と同じ店で働く40代の江美(入山法子)だ。

人気アイドルとの関係にハマりながらも、人にすがることを否定し、お金だけを信じお金のために生きる留奈に対して、入山が演じる江美は、占いに人生を委ね、常に何かにすがり、過去を振り返っては曖昧に生きている。

入山の心配事はまず、江美の背景にあったのだという。

「今まで、体を売ってお金を稼ぐという価値観に触れてこなかったので、まず、そういった価値観を受け入れるのが困難でした。吉原や赤線(赤線地域、売春防止法施行前の私娼(ししょう)地域)が舞台の古い映画をたくさん観たり、今現役でそういったお店で働いている方のSNSを毎日チェックしたりする中で、人生っていろいろあるんだなって。当たり前過ぎる言葉なんですけど、ほんと、人生っていろいろあるんだって思ったら、すごく腑(ふ)に落ちたんです」

さらに入山の背中を押したのは、37歳の入山と江美が同じ時代を生きる女性だということだった。

「恥ずかしながら、お話をいただいてから漫画を読ませていただいて。ほぼ同世代の江美が悩んだり、苦しんだり、傷ついたりする姿を10代から40代まで描かれているのを知って、(江美が)同じ2000年代を過ごしてきたことに、ちょっと運命的なことを感じて」

入山と江美は、10代の頃に熱中していたことにも共通点がある。それも運命的に感じた要素かもしれない。10代の江美の部屋のシーンでは、自身の学生時代を思い出すような懐かしさ満載のセットに感動したそうだ。

■占い師役の橋本マナミの絶妙な演技に 「ほんとうに影響されそう」

原作の『明日、私は誰かのカノジョ』は、スマートフォン・PC向けの漫画配信サービス『サイコミ』で2019年から連載が続いている。『第68回小学館漫画賞・少女向け部門』を受賞し、累計500万部を突破する人気漫画だ。

一方、入山は、『シジュウカラ』や『雪女と蟹を食う』(共にテレビ東京)など、人気漫画の実写化ドラマに多く出演している。漫画が原作の場合、既にキャラクターのファンが多いため演じるのが難しいという人もいるようだが、入山の場合はどうだろうか。

「毎回ファンの方の熱気というものは伝わってくるんですけど、演じ方やキャラクターのつくり込み方は毎回違いますね。例えば『雪女と蟹を食う』の時は、監督から漫画とドラマは別ものだと思ってくださいと言われたこともあって、私のアイデアも加えてビジュアルをつくったりしました。私が演じた雪枝彩女は文学少女でちょっとミステリアスで、それでいて女性らしさもあるから“髪型は姫カットにしよう!”みたいにね(笑)」

「『明日カノ』は反対に、漫画に寄せましょうということで、ヘアメークチームや衣装チームに力を貸していただいてビジュアルをつくってもらった感じです」

撮影現場の様子はどうだったのだろうか。

江美が心のよりどころとする占い師“レター先生”を演じる橋本マナミを入山は「橋本さんのレター先生はほんとうに素晴らしかったです」と絶賛した。

「江美というフィルターを通していますけど、“ほんとうに影響されそう”って思うくらい、ほんとうに“レター先生”だったんです。橋本さん自身、占い師っぽくするかとか、怪しい感じにするかとか、すごく絶妙なラインを考えて演じていらして。それがほんとうに絶妙で引き込まれちゃいました」

橋本も自身のコメントで「入山法子さん演じる江美役との対峙(たいじ)シーンでは、レター先生の世界観で江美の不安定な心情を魅了するようなシーンになったかと思います」と語っている。入山に、橋本との対峙(たいじ)シーンの見どころを聞くと「そこは、お楽しみに! です(笑)」とかわいくおあずけを食らわされた。

■「自分をかわいそうな人間と思っているままで終わってほしくない」

5月2日から放映がスタートした『明日、私は誰かのカノジョ シーズン2』の、最初の2週はシーズン1に登場した“ゆあてゃ”(齊藤なぎさ)の壮絶な過去が明らかになる『特別編』。第3週からシーズン2の本編が始まる。

江美は留奈の同僚として登場し、回を重ねるごとに江美の存在を増してくる。入山はキャスト決定時に「後悔や“たられば“ばかりが残る自分の人生、途方もなく続く今の生活、希望もない未来に、彼女(江美)はどう立ち向かっていくのか、精いっぱい寄り添って、演じ切りたいと思っています」とコメントしているが、入山が感じた江美とはどんな人物なのだろうか。

「江美は、極端に人の目を気にする人だと思いました。“自分がどうしたい”じゃなくて、嫌われたくないとか、悪く思われたくないとかが先行してしまって生きてきた人なんだろうなって。だからこそ周りに流されてしまうし、自分じゃ決められないんだと思います」

「それに、相手のために決めたのに自分に跳ね返ってきたことは相手のせいにしてしまう。自分の弱さみたいなものを理解しているのに、変えることができない。どうしても弱さを拭えない人なんだなって。でもどうしても、自分をかわいそうな人間と思っているままで終わってほしくなくて」と入山は、監督と相談しながら入山の中の“江美”を成長させたのだという。

入山は演じる役柄をとことん深掘りするタイプのようだ。

「そう思っていただけるなんて、うれしいです。自分では意識していないんですが、いただいた役を一番理解できるのは自分だっていうのは、どこかで思っているかもしれないですね。だからこそ、役に対してすごく愛情がありますし、もっと知りたい、もっと寄り添いたいなって思っています」

「人生に無駄なことなんてない、そんな思いをお届けできればと思います」という入山が演じる江美に、出会うのが楽しみだ。

ヘアメイク:美舟(SIGNO)スタイリング:黒崎彩(Linx)

■MBS/TBSドラマイズム『明日、私は誰かのカノジョ シーズン2』

2023年5月2日(火)深夜スタート
放映時間:MBS=毎週火曜 24:59~、TBS=毎週火曜 25:28~
出演:〈シーズン2〉茅島みずき、綱啓永、新井美羽、稲葉友、石川恋、橋本マナミ、入山法子 〈特別編〉齊藤なぎさ、本田響矢

【入山法子 Profile】
1985年生まれ、埼玉県出身。2004年、週刊誌『週刊朝日』(朝日新聞社 ※現在は朝日新聞出版)の表紙を務めモデルとしてデビュー。2006年からは本格的に俳優としての活動を始め、映画やドラマなどに出演。2022年は人気漫画を原作とした『雪女と蟹を食う』や、詩人・三好達治の生きざまを描く映画『天上の花』でヒロインを演じている。趣味はエレキベースと乗馬。アロマテラピーや和装の有資格者でもある。

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