「ともにオリンピックへ」最強のライバルが誓い合った夢 “世代トップランナー”杉森心音と細谷愛子が選んだ道

2人で誓った夢は「共に五輪へ」。

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その大きな夢を叶えるために、この春新たな一歩を踏み出した世代トップレベルの長距離ランナー杉森心音さん(浜松市出身)と細谷愛子さん(静岡市出身)。18歳の2人は2023年春、高校を卒業すると実業団チームで競技を続けるという道を選びました。

小学生の頃から“最強のライバル”として競い合ってきた杉森心音選手(写真左)と細谷愛子選手

静岡県のすべての市と町が参加し、小学生から50代まで幅広い世代が顔を揃え、23回の歴史を数える「しずおか市町対抗駅伝」。コロナ禍前は、スタート地点の静岡県庁前や沿道に多くの人が集まり、地上波中継は土曜日午前中ながら、毎年高視聴率をマークする静岡の冬の風物詩として定着した駅伝大会です。私は、この大会の実況を担当し、2人の活躍を小学生時代から何度も目にしてきました。

杉森さんが中学の1年先輩で後に同じ高校に進むことになる米澤菜々香さん(現名城大)が前年、区間賞を取った区間を同じく先頭で駆け抜けたこと。細谷さんが小学6年生の時、2014年仁川アジア大会10,000m銅メダリストの萩原歩美さんに大会に出てほしいと手紙を書き、その情熱に胸を打たれた萩原さんが多忙なスケジュールの中、出場を決意。チームメイトとなり、中継所でたすきリレーをしたシーンはとても印象深い場面です。そんな2人がこれからは実業団ランナーとして、日本最高峰のレベルで競い合うことになります。

2019年冬の「しずおか市町対抗駅伝」。中学3年生だった2人は別の区間で、それぞれ区間賞を獲得。大会翌日に生放送した関連番組に出演してくれた2人は、それぞれの印象や目指す走りなどを、中学生とは思えない落ち着いた語り口で話してくれました。

そして、番組終了後、スタジオ横のメッセージボードに2人が書いたのが「一緒に五輪へ行く」という夢でした。レース中は最強のライバルでも、普段は仲のよい2人。番組後に一緒に遊びに向かう姿は、女子中学生そのものでした。

その後、杉森さんは浜松北浜中から駅伝の強豪・仙台育英高校に進学。2年の時には全国高校駅伝の優勝を経験。3年時にはチームの主将を務めながら、同世代トップクラスのランナーに成長しました。

杉森さんが高校卒業後に選んだ道が「小学生から憧れていた人」というリオと東京、2度の五輪代表となった鈴木亜由子選手が所属する日本郵政グループ。「(鈴木)亜由子さんの試合への準備の仕方や体のケア、気持ち切り替え方などがすごい」とさっそく、鈴木選手から大きな影響を受けています。1年目は「体をしっかり作り、筋力を強くして走れる距離を増やしていきたい」と先を見据えての目標を掲げます。

また、実業団女王を決める「クイーンズ駅伝」は高校時代を過ごした宮城が舞台ということで、そこでの走りへの思いも口にしていました。

一方、細谷さんは静岡東中時代、全国中学駅伝で2年連続MVPを獲得すると、関西の名門・立命館宇治高校へ進学。親元を離れた京都での3年間は故障に悩まされながらも、2年時には区間賞の走りで都道府県対抗女子駅伝の京都チームの優勝に貢献。続く3年でも全国高校駅伝で区間賞を獲得。こちらも世代屈指の活躍を見せました。

「レベルの高い選手と共に練習できたら」と世界陸上の舞台に2度立った松田瑞生選手がいるダイハツへ進んだ細谷さん。ルーキーイヤーの目標は「丈夫な体づくりと自己ベスト」とこちらも着実に一歩一歩、成長曲線を進んでいます。

ともに静岡出身だった2人が、宮城と京都、離れた土地で高校生活を過ごした3年間、直接のコミュニケーションこそ減りましたが、大会であった時には言葉を交わし、励ましあってきました。

どちらが好成績を出せば、それに追いつきたいと練習に取り組む。互いを意識し合う2人は、夢を語り合う最高の仲間であり、負けたくない最大のライバルです。

18歳の2人が目指す夢の舞台は、2024年のパリ、2028年ロサンゼルス、そして2032年のブリスベン、さらに、2036年も…日の丸を胸に走るその日を楽しみに大きな期待を寄せてしまいますが、まずは目の前の目標を、そして地元・静岡の駅伝にもぜひ一緒に凱旋してほしい。2人の活躍をこれからも静岡から見届けていきます。

(SBSアナウンサー 岡村久則)

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