メジャーにも下部ツアーにも出る理由 藤田寛之が楽しむ山下り

ムービングデーにランガー、チェとプレーした(撮影/桂川洋一)

◇シニアメジャー第2戦◇キッチンエイド全米シニアプロ選手権 3日目(27日)◇フィールズランチイースト(テキサス州)◇7193yd(パー72)

最終日を首位で迎えるパドレイグ・ハリントン(アイルランド)は前週、「全米プロ」の4日間を50位で終えて今大会にやって来た。プロゴルフ界広しと言えども、藤田寛之のようなケースも数少ない。前週は日本でレギュラーツアーに出場。その直前は26年ぶりに下部ABEMAツアーの地を踏んだ。

舞台の“ギャップ”が激しく、2012年に賞金王になった経歴からすれば、珍しくも思える今年のスケジュールだが、本人にしてみれば「ごく自然なこと」だという。「自分のそういうキャリアがあるから違和感を持って感じてもらえるんでしょうけど。出場権とスケジュールが合っただけのこと。これが自分の今の立ち位置。純粋に試合に出ていたら、レギュラーではこのカテゴリー、シニアではこのカテゴリーになったから」

藤田寛之は初めてのシニアメジャーを堪能している(撮影/桂川洋一)

昨年末に特別シードを含むレギュラーツアーの出場権を失った国内ツアーは今季、QTランクで57位というのが“立ち位置”。その資格を携えて、藤田は依然としてツアープレーヤーとしての本線を歩き続けている。賞金で言えば、今週のシニアメジャーは総額350万ドル(4億9217万円)、下部ツアーは1500万円と32倍以上の開きがある。練習環境には雲泥の差、コースで言えば、日本と米国、レギュラーと下部ツアーでは種類の違う難しさがありそう。

藤田はそのギャップもことさら嘆こうとしない。「下を見ればキリがないし、上を見てもキリがないみたいなことはあるじゃないですか。だからどんな角度で見るかですよね。日本の下部ツアーだって、開催してくれる人、それを良くしようとしてる人もいる」。長い時間をかけてアップダウンを経験してきた53歳の視野は広い。

下部ツアー、レギュラーツアー、シニアツアー、そして海外のシニアメジャーへ(撮影/桂川洋一)

「自分は下り坂にいる。山頂の景色を見て、今は下山をしている途中。それも見る角度が違うと思う。ある人は『あの人すごかったなあ』って、『やっぱり寂しいよな』って思う人もいるかもしれないけど、自分は降りるのも楽しみたいんですよ。若手の成長だったり、例えばこういうところに来てシニアの世界のメジャーを見たり」

キャリアの晩年にだって、驚きや初体験もある。今週は3日目に米シニアツアーで賞金王に11回輝いたベルンハルト・ランガー(ドイツ)、PGAツアーで8勝を挙げたチェ・キョンジュ(韓国)と同組で回る機会に恵まれた。「願ったりかなったりの組み合わせ。来たかいがあった。ランガーは65歳? ちょっと信じられない。あのゴルフの感覚、ボールコントロール…。自分がレギュラーのメジャーに行っていた頃を思い出しました」

今年はシニアメジャーに3試合出場予定(撮影/桂川洋一)

シニアメジャーの次の試合はまた下部ツアー。6月7日からの「LANDIC CHALLENGE 10」(福岡・芥屋GC)を予定している。「そうやって楽しんで降りられる人って数少ないわけですよね。今、この瞬間を大事に。いろんなこと感じながらやりたいなと思ってます」。全ての登山家は山を降りる。人それぞれに見える景色を楽しみながら、藤田はプロゴルフをする。(テキサス州フリスコ/桂川洋一)

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