ドライバーのヒールヒットは「壁ドン」で直す レッスンの最前線からLIVEルポ

いままでのゴルフレッスンはいわゆる“感覚”が主流だった。「インサイドに上がっているからもうちょっと外に上げましょう」。これ、コーチの言う“もうちょっと外”ってどれぐらい外なの?そう思ったゴルファーは星の数ほどいるだろう。これからお届けするレッスンのやり取りは、そんな感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新機器を駆使したプロのコーチたちの具体的なレッスンの一部始終を生レポート。人の振り見て我が振り…直せます。

ドライバーでヒールに当たりやすくスライス傾向なのが悩みの岡田さん(30代、男性、平均スコア100)

ゴルフ歴5年、ベストスコア89。「ドライバーの飛距離不足が悩み」と語る岡田洋典(おかだようすけ)さん。

右に打ち出してさらに右に曲がる「プッシュスライス」や、左に打ち出してから右に曲がる「プルスライス」の両方が出て、飛距離をロスしている。そのため平均スコアが100台と伸び悩み気味。「常に100切り」を目指したいと語る。

セットアップに大きな問題はないが・・・・

プロ(右)はアドレス時に引いた右腰の線からトップで腰がはみ出ることがない

まず、岡田さんの正面側からのスイング映像をプロと比較。アドレスでは大きな問題はなかったが、バックスイングからトップにかけてツアープロとの違いが顕著に出た。

今回のレッスンを担当した岩永貴幸(いわながたかゆき)コーチは「右へのヒップスウェーが起きています」と指摘。プロはトップで腰が平均で0.3インチ(約7mm)ターゲット方向に動くが、これに対して岡田さんは腰が1.5インチ(約38mm)ターゲットと逆方向に動いている。結果、ダウンスイングからインパクトにかけて右足に体重が残り過ぎ、インパクトで左腰が引ける動きにつながっていた。

ヒールヒットの原因がここに

プロ(右)は「左にウエートシフト+腰の回転」に対し、岡田さん(左)は左に乗れていない

ダウンスイングでは、ターゲット方向に腰がスライドしながら左足に自然と体重が乗る動きが理想。ただし、岡田さんの場合は右にスウェーすることで、切り返し以降も右足に体重が極端に残りやすかった。「体重が右過ぎると、スイングの円弧が極端に右にいき、そのままいくと地面をダフってしまいます(プロのスイングの円弧は体の中央かやや左側)。そのため、上体をボールから離し、かつ左手をフリップ(左手首を甲側に折る動き)することで、なんとかインパクトの帳尻を合わせようとしているんです」(岩永コーチ)。

右に体重が残り過ぎると、最下点がかなり手前になり、手先で帳尻を合わせるしかない

岩永コーチは続ける。「上体がボールから離れていくと、スイング軌道はアウトサイドイン軌道を描きやすくなります。さらに左腰が引けやすいのも、クラブヘッドが外から下りる軌道を助長していて、ヒールヒットしやすい。インパクトでクラブフェースが右を向けば、右に打ち出してさらに右に曲がる『プッシュスライス』。フェースが左を向けは、左に打ち出してから右に曲がる『プルスライス』になり、飛距離をロスしてしまいます」と岡田さんの悩みを分析した。

“壁ドン”ドリルでスウェーを矯正

壁に体を預けるようにして動かすイメージ

ヒールヒットの根本的な原因である右へのスウェーを直すため、岩永コーチが提案したのは、壁を使うドリルだ。左足を壁につけ、普段のアドレスと同じ構えを作る。両腕は胸の前でクロスさせ、背中全体が壁につくように体を回す。

このドリルのポイントについて岩永コーチは「簡単に見えますが、実際にやってみると結構キツい動きです。無理やり回すというよりも右肩、右腰で壁によりかかる感じでトライしてみてください」とアドバイス。

右へのヘップスウェーがおさえられ、左の線から腰がはみ出る動きがなくなった

ドリル後のスイングを映像で確認すると、トップで1.5インチ(約38mm)ターゲットと逆方向に動いていた腰が1.0インチ(約25mm)ターゲット方向へ動く結果に
ダウンスイングでは左足への体重移動が発生し、インパクトでは腰が目標方向へ3.5インチ(約89mm)スライド。以前の極端な右足体重スイングでは、0.5インチ(約12mm)ターゲットから遠ざかってインパクトを迎えていたのと比べると約76mmも左サイドでインパクトを迎えていることになる

インパクトで「0.5"A(アウェイ)」ターゲット方向から遠ざかってしまっていたのに対し「3.5”T(トワード)」左に移動し、体重がのった動きが変わった

右へのスウェー解消で最下点のズレが減り、左手首をフリップさせる必要もなくなってきた。またトップで体の右サイドにスペースができたことで、クラブをそのまま下ろすことができ、インサイドからクラブが下りやすくヒールヒットも解消されてきた。フォロースルーでクラブをターゲット方向に投げ出すような、力強い動きへと変化した。

「右に体重を乗せる」の誤解

「多くのアマチュアは、バックスイングで右サイドへ体重移動しなければならないと思いがちです。実際には右足に体重を乗せる意識がなくてもいいんです。アドレス時の背骨の角度をキープしたまま胸を回す正しいバックスイングができれば、上半身の多くの部分が右足の上に乗り、体重も自然と右足にかかってきます。『移動』という言葉が独り歩きして、『自ら移動しなければならない』と思ってしまうアマチュアの方が多い。そうなると下半身も一緒に右に動きやすく、岡田さんはテニス経験もあることで余計に『体ごと右に動かす』意識が強くなっていたのだと思います」(岩永コーチ)と分析。「ただ、腰のスウェーを直しただけでもスイングが改善されているので、やることも考えもシンプルにすればメキメキ上達するはずです」と締めくくった。

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