時代で変わる恋愛バラエティ「パンチDEデート」から「ねるとん紅鯨団」へ  制作は関西テレビ、収録は東京、司会は東京生まれ東京育ちのとんねるず

大阪発、恋愛バラエティ番組の先駆けとなった『パンチDEデート』

「ひと目会ったその日から」と聞いて、即座に「恋の花咲くこともある」と返せたあなたは、間違いなく50代以上だろう。1967年生まれの私が最初に親しんだ恋愛バラエティ番組が、1973年から84年まで放送されていた『パンチDEデート』だ。

『パンチDEデート』は、関西テレビ制作の視聴者参加型お見合い番組。司会は、当時大人気だったお笑い芸人、西川きよしと桂三枝(現・桂文枝)。カーテンで仕切られ、互いの姿が見えない男女にきよしと三枝が話を聞き、それぞれが想像を膨らませたところで、カーテンが開いてご対面。二人だけで会話した後にスイッチを持ち、気に入ったらスイッチオン。カップル成立か否かは、ハート型の電光掲示板の点滅で判明…といった、至ってシンプルな番組構成だった。

ちょっと残酷なのは、ハートの点滅によって、どちらが押したか、どちらが押してないか、一目瞭然であったこと。男性だけスイッチオンのときは、「あぁ残念だったね」くらいの気持ちなのだが、女性だけスイッチオンだったりすると、「何この男! 女に恥をかかせてっ」とテレビに毒づいたものである。

番組名物はユニークな参加者。目的は恋人獲得よりテレビで目立つこと?

1970年代中頃から80年代前半、恋愛バラエティといえば、大阪在住テレビ局の独壇場だった。『パンチDEデート』を筆頭に、「フィーリングカップル5vs5」が名物企画だった『プロポーズ大作戦』。“かぐや姫” を巡って男たちが争奪戦を繰り広げる『ラブアタック!』。いずれも大阪のホールでの公開収録であり、客席の笑い声が番組には欠かせなかった。

男女の出会いを提供しているわけだが、参加者のほとんどは「恋人がほしい」というより、「テレビで目立ちたい」といった気持ちが強かったのではないか。大阪らしい、ユニークな参加者たちが番組を盛り上げていた。

東京生まれの恋愛バラエティ番組「ねるとん紅鯨団」

恋愛バラエティといえば大阪。そう思っていたが、80年代後半、ついに東京のにおいがする “Boy Meets Girl” 的な番組が始まる。フジテレビで放送していた『ねるとん紅鯨団』だ。

『ねるとん紅鯨団』も制作は関西テレビ。さらに関西テレビが得意とする視聴者参加番組だが、大阪的なノリは一切なし。収録が東京であることはもちろん、司会が東京生まれ東京育ちのとんねるずだったことも大きいだろう。

「恋人が欲しい」という参加者の本気度も、これまでの恋愛バラエティより高めのように見えた。参加者の本名はもちろん、勤務先までテロップで表示されるのだから、それ相応の覚悟が必要だったのかもしれない。

とんねるずが参加者たちにインタビューする様子は、部活の先輩がシャイな後輩の恋愛相談を聞いて、発破をかけているようにも見えた。「♪ 男なら立ってゆけ 女はただねて待て」で始まる、エレクトリックなディスコチューンといったオープニング曲も、いかにも80年代後半の東京である。

「あいのり」「テラスハウス」など、恋愛バラエティから恋愛リアリティへ

「彼女(彼氏)いない歴」「ツーショット」など、多くの新語が“ねるとん”から生まれたが、私の印象に残っているのが告白タイムの「最初から決めてました」という一言だ。それなら、フリータイムの意味とは?「まったくお話しできませんでしたが、好きです」と告白する人もちょくちょくいて、「話してない相手に? 結局ルックスか」と感じたことはある。

参加人数にも触れておきたい。30分番組なのに、男女それぞれ15人。テレビにほとんど映らない人のほうが多い。告白タイムの「ちょっと待った!」という決めセリフも番組名物だが、当然、誰にも告白されない女性が相当数いたわけで。となると、むしろテレビには映りたくなかったでしょうね。

2000年代以降も数々の恋愛バラエティ番組が誕生したが、話題になるのは『あいのり』『テラスハウス』といった、少人数の男女が共に旅したり生活したりといった恋愛リアリティショー。じっくり時間をかけ、一人ひとりにスポットをあて、各人のキャラクターを浮き彫りにし、詳細な恋模様を映し出していく。告白の結果振られてしまっても、いなかったことにはならない。

ひと目会ったその日から恋の花が咲いても、長い時間一緒に過ごすと、「あれ? この人違う」というのはよくあること。“Meets” だけでなく、その先にある “Love”、さらには “Live” までさらせる覚悟がないと、今は恋愛バラエティには出られない。まぁ、恋人を見つけたい若者には、今はアプリがあるしね。

カタリベ: 平マリアンヌ

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