車いすの起業家・家本氏がフルマラソンに参加、熊本で「チャリチャリ」を運営するまで

ストライク<6196>は23日、シェアサイクル事業「チャリチャリ」を運営するneuet(ニュート、福岡市)の 家本賢太郎社長を招き、スタートアップ企業と事業会社の交流イベント「Conference of S venture Lab.」(熊本市共催)を開いた。ストライクと熊本市は3月、「産業振興に関する連携協定」を結んでおり、同イベントはその第1弾となる。

家本氏は、熊本市と2022年から共同で行うシェアサイクル事業について、「現在の550台でも足りないという声がある。年内に1100台に倍増させる」と、当初目標の300台を大幅に上回る計画を語った。また、メルカリからシェアサイクル事業を継承した経緯や、熊本市で事業を始めたきっかけが、フルマラソンだったことなどについても明かした。

急拡大する「チャリチャリ」

チャリチャリの自転車(neuet提供)

チャリチャリは2018年、福岡市で事業を始め、東京、名古屋、熊本の4カ所で展開している。世界でも珍しい「1分単位」(ベーシック1分あたり6円、電動アシスト同15円)の料金システムを採用し、急成長している。また、公費を頂かない事業として、民間の自力で支えている。福岡市、熊本市では共同事業をやっているが、公費を頂かず、地域の資本に支えてもらい、民間の自力で支えている。最近では、JR九州との連携を進めている。

自転車事業、チャリチャリを始めるなんて思いもよらなかった

家本賢太郎・neuet社長

クララオンライン(DX支援、クラウド事業、東京)を15歳で創業した。そのころ私は車いすに乗っており、将来自転車事業を始めるなんて思いもしなかった。その後、コンサルティング事業で中国で年の半分ほどを過ごしている時期が数年間あった。中国ではそのころ、若い世代が起業したシェアサイクル「モバイク」「ofo」が拡大し、街のあり方が一変するのを見ていた。その2社は残念ながら現在はなくなっているが、自転車のポテンシャルの高さを感じた。その後、小泉文明さん(当時メルカリ社長・現会長)から、メルカリのシェアサイクル事業「メルチャリ」の裏側を手伝ってくれという話があった。そのころには、まさか自分が将来メルチャリ事業を買収するとは思いもよらなかった。

メルカリから事業承継した経緯

メルチャリを承継した理由は、「自分でやりたくなった」から。シェアサイクルは、NTTドコモさん、ソフトバンクさんと我々で、市場のほとんどを占めている。クララオンラインと競合企業との間では、資本力は大きく違うが「大きく手を広げるより地域に根差すやり方は、自分たちでやった方が、生きるのでは」と感じた。

オープンイノベーションのうまくいくポイント

モデレーターは、XOSS POINT.施設長で株式会社kuniumi 代表取締役の上平健太氏

オープンイノベーションがうまくいくかどうか、キーとなるのは意思決定の速さが同じであること。意思決定の速さが違うと、お互いが不幸になる。スピード感の違いを感じたら、座組みを変えるのか、役割分担をお互いに見直す。想定外のことを一緒に対応できるのかどうか。経営者同士がダイレクトに連絡取れるかが大事だ。

オープンイノベーションに求められるスキルは

「非定型」のものを「定型化」ができる人の価値が高い。オープンイノベーションというのは「非定型」の作業ですが、それを具現化するには「定型化」する必要がある。その「型作り」ができる人なのか、見極めるのがすごく大事だ。

熊本との縁は熊本城マラソンから

熊本城マラソンのスタート地点となる熊本市の通町筋

熊本との出会いは「熊本城マラソン」(毎年2月に開催)。計5回フルマラソンを走っているうちに、熊本が好きになった。

ただ、マラソンのため来るたびに「熊本市内は移動が便利ならもっと魅力的になるのに」と感じていた。

自転車のポテンシャルを考えると、熊本でシェアサイクルをやったら便利でしょう、という思いを募らせていた。

そんな中、熊本市でシェアサイクル事業のプロポーザル(提案型の公募)を行っていたので、手をあげさせていただいた。

年内に台数を倍増、持続性が課題

熊本市では、最初110台で展開。当初は300台が目標だったが、今は550台と5倍になった。今年中に、さらに倍の1100台にする。シェアサイクルやレンタサイクル事業は、公費が途絶えた瞬間に事業が「シュン」となってしまう事が多い。公費負担なくても、この水準なら事業が成立する。これから先は、いかに持続性を作れるかが課題だ。

略歴

家本 賢太郎(いえもと・けんたろう)

1981(昭和56)年12月2日生まれ。愛知県出身。

1997年、15歳でクララオンライン設立。

14歳のころ、脳腫瘍の摘出後に車椅子生活になる。1999年に、奇跡的に両足の運動神経が回復。車椅子無しでの生活が可能になった。

本業であるDX支援・クラウド事業のほか、スポーツ領域のDXや、国内最大の中古スポーツ自転車の流通業、プロバスケットボールチームの運用など多様な事業を展開している。

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