台湾誘客へ、自治体連携 茨城県内で機運 共通割引券やPR

茨城空港に到着し、笑顔を見せる台湾の観光客=4月9日、小美玉市与沢

茨城空港(茨城県小美玉市)を利用する台湾からのインバウンド(訪日客)を取り込もうと、茨城県北を中心に自治体が連携を強化している。常陸太田と大子は2市町で使える共通割引チケットを発行。水戸、笠間、ひたちなか、大洗の4市町は観光スポットを協力してPRする。台湾の訪日客は再訪率が高いとされ、地域連携によるスケールメリットで観光振興につなげたい考え。

常陸太田市天下野の竜神大吊橋に4月、運航が始まった台湾・高雄便の観光客26人が訪れた。手にしていたのは「おもてなしパスポート」。同市と大子町の観光施設や飲食店などで使える無料・割引の優待券だ。こうした観光面での2市町の連携は初めてで、計千部を発行した。

宮田達夫市長と高梨哲彦町長は2月、台湾・台北市を訪問した。県が開いた展示即売会「いばらき大見本市」で、現地の旅行会社などに優待券を配布。茨城空港で台湾2路線が運航すると、効果が表れた。

茨城空港を利用する訪日客は、羽田や成田の各空港と比べて、県北地域の観光地を訪れる可能性が高い。「宿泊や温泉の施設がある大子町と連携することで誘客できる」「優待券を介して互いに訪日客を取り込みたい」と、両市町の担当者は期待する。

台湾の観光客にとって、茨城県の観光地は国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)など一部を除くと、浸透していない。常陸太田市は宿泊施設も限られ、誘客の「弱点」となる。連携することで、1自治体では限られる誘客力を高め、地域での滞在時間を延ばして観光消費額の拡大を目指す。

県によると、コロナ禍前の2019年度、台湾から茨城県を訪れた観光客は約3万1700人。同年の観光・レジャーを目的とした訪日リピーター数(観光庁調べ)では、台湾は349万4千人で1位だった。

人口減少により、国内の観光需要は頭打ち状態。その中で、1人当たりの観光消費額や再訪意欲の高い台湾の訪日客について、水戸観光コンベンション協会の担当者は「第1のターゲット」と話す。

水戸など4市町は20年度から、連携して台湾向けに観光情報を発信。笠間市が台北市に開設した交流事務所を通じ、旅行博覧会への出展やPR活動を展開している。各自治体は交流サイト(SNS)で影響力を持つ「インフルエンサー」を起用し、発信を強める。

県国際観光課は、今後も台湾での旅行博に出展し、市町村にPRの機会を提供する考え。担当者は「市町村間の連携を促し、県全体での誘客を高めたい」と話した。

© 株式会社茨城新聞社