上場する「日経225ミニオプション」、基本的な4つの取引方法

4月から、日経平均株価が非常に強い動きになっています。背景には、東証が上場企業に資本コストや株価を意識をするよう要請したことによるPBR(株価純資産倍率)の改善期待などから、海外投資家が大幅に買い越している事があげられます。4月末から5月上旬にかけ行われた決算発表と同時に、増配や自社株買いなど株主還元を発表する企業も多く見られました。


上場予定の日経225ミニオプション

日経平均株価の大幅上昇に伴い、上場来安値を更新する商品もありました。日経ダブルインバース(1357)などインバース型のETFです。

日経平均株価が上昇する局面で、日経ダブルインバースの信用買い残高は5月19日(金)現在で過去最高の1億9,300万口となっています。また、発行済口数も9億2,300万口となっています。

2023年1月9日(月)付の私が書いた記事で、日経ダブルインバースなどは「長期投資に向かない商品」と解説していますので、合わせ読んでいただけると幸いです。個人的な意見となりますが、日経ダブルインバースの信用買いで長期保有するのであれば、日経平均オプションなどを有効活用される事をお勧めします。

本日、5月29日(月)から、日経225ミニオプションが上場する予定です。日経平均株価(日経225)を対象とした株価指数オプション取引で、取引単位が日経225オプションの10分の1となり、日経225ミニオプションを活用することにより、従来よりもきめ細やかなリスク管理が可能になります。

日経225ミニオプションの取引単位は、オプション価格×100円(日経225オプションの10分の1)であるため、より少額からオプション取引を行うことができます。また、日経225オプションの満期日は各月の第2金曜日に設定されていますが、日経225ミニオプションでは各月のすべての金曜日に設定されています。

基本の4つの取引

日経225オプションには、4つの基本的な取引方法があります。損益分岐点は、全て権利価格+プレミアム価格です。

(1)コール・オプション(買う権利)の買い
日経平均株価が上昇し、権利価格+プレミアム価格を上回れば利益となります。損失はプレミアム価格に限定されます。

(2)コール・オプション(買う権利)の売り
利益はプレムアム価格に限定されます。日経平均株価が上昇し、権利価格+プレミアム価格を上回れば損失が拡大します。

(3)プット・オプション(売る権利)の買い
日経平均株価が下落し、権利価格+プレミアム価格を上回れば利益となります。損失はプレミアム価格に限定されます。

(4)プット・オプション(売る権利)の売り
利益はプレムアム価格に限定されます。日経平均株価が下落し、権利価格+プレミアム価格を上回れば損失が拡大します。

【例】コールオプション
先週末、5月26日(金)の日経平均は30,916円です。仮に6月のSQまでに日経平均が31,500円を超えると考えます。プレミアム価格は190円で計算します。

コール買い:権利行使価格31,500円 + プレミアム190円 = 31690円
日経平均が仮に31,690円を超えてくれば、利益は無限となります。しかし、超えない場合はプレミアム190円分が損失となります。(損失限定)

コールの売り:権利行使価格31,500円 + プレミアム190円 = 31,690円
日経平均株価が仮に31690円を超えない場合は、プレミアム分が利益となります。しかし31,690円を超えてくれば損失が無限となります。

【例】プットオプション
先週末、5月26日(金)の日経平均株価は30,916円。仮に6月のSQまでに日経平均株価が30,000円まで下落すると考えます。プレミアム価格は125円で計算します。

プット買い:権利行使価格30,000円 ー プレミアム125円 = 29,875円
日経平均株価が仮に29875円を下回れば利益は無限となります。しかし、下回らない場合はプレミアム125円分が損失となります。(損失限定)

プット売り:権利行使価格30000円-プレミアム125円=29875円
日経平均株価が仮に29875円を下回らない場合はプレミアム分が利益となります。しかし、29875円下回った場合は損失が無限となります。

※注:SQ清算など考慮せず

このように、オプションはコール、プット共に買いから取引を行った場合は、損失が限定されるのでインバース商品よりはリスクは少なくて済みます。仮に、思惑通りの展開となれば、当然利益が出る商品でもあります。

米国では、オプション取引が活発に行われています。アップル株式などの個別銘柄を売買する個別株オプション、S&P 500種株価指数などの株価指数を対象とする株価指数オプション、上場投資信託(ETF)を対象とする「ETF オプション」の3種に分類されます。2023年2月の日経新聞で、日々のオプション取引の売買高(10日移動平均)は、約4,800万件前後と過去最高水準で推移しているとの報道もありました。日本にも個別株オプションは上場していますが、出来高がないのが現状です。

まずは、日経オプションをヘッジ目的で取引されるのもいいのではないでしょうか。留意点として、日本市場は株式や投資信託で損失が出ていても、オプション取引とは課税方式が異なるため、損益通算はできないので注意が必要です。

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