73歳男性「一世一代の晴れ舞台」重さ82キロの「力石」見事に担ぎ上げ 鹿嶋神社で初の奉納 兵庫・高砂

おはらいを受け、緊張した表情で奉納場所に向かう瀬川喜樹さん=鹿嶋神社

 兵庫県高砂市阿弥陀町地徳の鹿嶋神社で28日、巨石を持ち上げる「力石」の奉納行事が初めて執り行われた。播磨の歴史を研究する瀬川喜樹(よしき)さん(73)=姫路市=が挑戦し、見事成功させた。重さ82キロの石を持ち上げた瀬川さんは「一世一代の晴れ舞台という思いで臨んだ」と振り返った。(田中朋也)

 力石は江戸時代から明治時代にかけて、力試しとして、各地で担ぎ上げられていた。筋力トレーニングが趣味の瀬川さんは10年前、文献で力石を知った。新型コロナウイルス禍を経て「コロナ禍の収束を願いつつ、自分の力も試したい」との思いで、今年4月に友人ら計14人で「播州力石保存会」を結成。地元の人脈を頼って同神社へ協力を依頼した。西谷真太郎宮司(56)は「力石の奉納は珍しく、全国でもあまり見られない。これを機にみなさんに知ってもらえたら」と話す。

 奉納に向け、瀬川さんは自身でデザインしたのぼりを作り、日々のトレーニングで準備を進めてきた。前日は緊張でほとんど眠れなかったという。本殿でのおはらいを受けた後、緊張した面持ちで力石のもとへ向かった。同保存会による伊勢音頭が境内に響き渡ると、盛り上がりは最高潮に。観客約20人が見守る中、鍛え上げた肉体でがっしりと力石を抱え、一気に胸まで持ち上げると大きな拍手が起きた。

 奉納を見守った兄の洋和(ひろかず)さん(78)=姫路市=は「気合がこもっているのを感じた。ごつごつしている持ちにくい石を見事に持ち上げた」と喜んだ。瀬川さんは「みなさんの協力のおかげで達成できた」と笑みを浮かべた。瀬川さんの挑戦は年齢的なことも考えて今回が最後で、来年以降は挑戦者が現れたら協力をするという。

© 株式会社神戸新聞社