「冷静になる暇なかった」15万円詐欺被害、悔やむ男性 PCに突然「感染」、復旧費かたり

購入させられた電子マネーを手に、特殊詐欺の手口を振り返る男性=5月上旬
特殊詐欺の犯人と男性との通話履歴。電話を切っても、非通知設定で繰り返しかかってきた

 トロイの木馬に感染しました-。パソコンの画面に突如このメッセージが表れ、復旧費名目で金をだまし取られる。青森県内で今年、相次いで確認されている特殊詐欺の手口だ。被害に遭った県内の男性(69)が5月上旬、東奥日報の取材に応じ、「当時は、えらいことになったと気が動転していた。冷静になる暇もなかった」と不安をあおる巧妙な手口を振り返った。

 男性は3月下旬、自宅のパソコンで、野球関連のニュースを見ようとインターネットサイトを開いた。すると突然、画面に警告メッセージが表示され、大音量の警告音が流れ始めた。マウスもキーボードも反応しない。慌てて画面に表示された電話番号に連絡すると、「マイクロソフト社」の社員を名乗る女が電話に出た。

 女は片言の日本語で「ウイルスが侵入しました。復旧するにはお金がかかるけれど、いいですか。近くにコンビニはありますか」などと話し、コンビニエンスストアで3万円分の電子マネーを購入するよう促された。

 女は、コンビニに行く間も電話を切らないように指示。コンビニの店員に購入目的を聞かれた場合には、「子どものゲームのため」と答えるように念押ししてきた。男性は「変だなと思ったが、パソコンを直すのに必死だった」という。購入後、指示されるがまま電子マネーに書かれたID番号を伝えた。だが女は「失敗しました。もう一度買ってきて」と言い、2回にわたり、電子マネー12万円分を購入させられた。

 その後も、女は繰り返し電話をかけてきて「作業は80%終了しています」「私も一生懸命仕事しています」などとまくし立てられた。男性はさらに金を要求され向かったコンビニで、偶然、特殊詐欺被害防止の広告が目に留まった。「自分も詐欺に遭っているのでは」と不審に思い、近くの警察署に駆け込んで相談し、被害に気付いた。女とやりとりし始めてから5時間以上経過していた。

 男性は「電話の相手を信じ、頼り切っていた。誰かに相談する余裕もなく、詐欺と疑えなかった」と悔しさをにじませた。被害額は計15万円。「気付くのが遅ければ、もっと金を取られていたはず。だまされたことがショックだし、腹が立つ」と怒りが込み上げた。

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