福井の14歳ピアニストが“異例”の抜てき 世界的な指揮者、チェコ名門管弦楽団と共演 不安の声あったけれど…

世界的指揮者の沖澤のどかさん、チェコの名門ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団と共演する矢賀部光夏多さん=5月6日、福井市の福井県立音楽堂

 福井県の敦賀市粟野中学校3年のピアニスト矢賀部光夏多(ひなた)さん(14)が、国内外で活躍する指揮者沖澤のどかさんとチェコ名門のヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団との共演を、福井市の福井県立音楽堂で果たした。矢賀部さんは「とにかく楽しかった」と笑顔で話し「言葉の壁を越えて全員で音楽を共有できた。海外の音楽を感じ取れたので、今後の演奏に生かしたい」と意欲を新たにしている。

 北陸3県で約180の音楽公演を開催する「風と緑の楽都音楽祭」の一環で、5月6日に開催された。

 矢賀部さんは2歳でピアノを始め、福井市のピアノ講師中野里美さん、京都堀川音楽高講師の西村静香さんらに師事。熱心な練習に加え、作曲家の意図や時代背景を調べるなど曲の理解度を深め、2022年に全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ部門中学1年の部で優勝した。

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 矢賀部さんと沖澤さん、同楽団との共演は、矢賀部さんと共演経験がある坂井市出身の指揮者小松長生さんの推薦や矢賀部さん自身の実績などを踏まえて決まった。関係者によると“14歳の抜てき”に不安視する声もあったが、沖澤さんから「音楽に年齢は関係ない」との後押しもあり、決定したという。

 演奏したのはシューマンの協奏曲で40分の大作。「(決定が伝えられた)昨年夏に練習を始めて、本番をずっと楽しみにしていた」と矢賀部さん。今年4月には小松さんに指揮棒を振ってもらい練習したが「オケの音がイメージでき、本番がもっと楽しみになった」と振り返る。沖澤さん、オケとのリハーサルでは、タイミングがずれた部分もあったが沖澤さんが調整してくれ「本番では自由に弾いていいよ」と声をかけてくれたという。

 本番当日、約1200人の観客を前に力強い演奏を披露した矢賀部さん。「緊張しなかったし、とにかく楽しかった。自分の中では大成功」。演奏後、ステージ上で沖澤さんにハグされ「うれしかった。演奏が成功したんだなと、ほっとした」と話す。退場時には楽団員から「ブラボー」と声をかけられ、観客からは大きな拍手が送られた。

 将来は「美しい“絵本”のようなピアニストになりたい」と矢賀部さん。誰もが笑顔になれる絵本のように、演奏を聴く人に風景を思い浮かべてもらい、笑顔になってほしいとの思いからだ。世界で活躍する指揮者と海外オケとの共演という貴重な経験を経て、さらなる飛躍を誓う。

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