「地域住民とつなぐため」確かな知識と技術で大木を守る“専門職”アーボリスト【SDGs】

緑豊かな日本国内には、身近な海岸や古い街道筋、歴史ある神社仏閣などで大きくて立派な木を見ることができます。こうした大木や樹齢を重ねた古木を長く守っていくために、高度な知識と技術を兼ね備えた専門職「アーボリスト」が活躍しています。

静岡県富士市と沼津市のほぼ境にある船津浅間神社。ここに、富士市指定の天然記念物・巨大なクスノキがあります。樹齢500年とも伝えられ、高さは30m以上。このオオクスや他のクスノキが境内一杯に枝を広げています。

「すごく立派で雄大ですよね」

「長い寿命を感じる木。枝ぶり」

クスノキにロープをかけるヘルメット姿の男性たち。

<渡邉真威さん>

Q.何を始めるところですか?

「大きなクスの枝おろしをします。建物の方に大きな枝が行ってしまっている。今後折れて建物とか、構造物を壊さないように事前に剪定する」

Q.たくさんの器具と装備だが…

「アーボリストと言って、大きな木を管理するのが仕事です」

大きな木を守る専門家「アーボリスト」。和訳すると『樹護士(じゅごし)』となります。富士市の渡邉真威さんは、ツリークライミングの日本チャンピオンで、樹木の知識に加えて、高い木の上で作業できる確かな技術が世界基準と認定されたアーボリストです。

<氏子や地域の人>

Q.あっという間に上に行っちゃいましたね

「たいしたもんだね」

「何分で行った?」

「1分かからない。スゴイ技術だ」

住民の依頼は、建て直す神社の拝殿に枝が落ちないようにすること。こみ入っている枝を一つ一つノコギリで切って、地上におろします。

太い枝では、チェーンソーを使います。長く重い枝には、ロープを結び、やさしく地面に下ろします。風通しや日当たり、木全体の重さのバランスなど、クスノキの気持ちを考えながら、アーボリストは枝を整えます。この枝おろし、クスノキの大きさもあって3日かける計画です。

「わぁ明るくなった。境内に陽が差しています」

<船津浅間神社 氏子総代 伊藤正さん>

「空が見えるようになりました。本当にきれいにやってくれて、みんな村の人たち喜んでますよ。ありがたいねぇ」

<アーボリスト 渡邉真威さん>

「一番は僕らが切ったことで樹勢が弱くなってしまうのが一番困る。切る位置、枝を外す位置も入念に全員で考えながら外すことができましたし、安全に仕事ができたこと」

Q.アーボリストってどんな仕事ですか?

「アーボリストは、地域の皆さんと木をつなぐ間の仕事かなと思います」

500年、この船津地区を見守ってきた天然記念物のオオクス。アーボリストの力でさらに樹齢を重ねる豊かな森となりそうです。

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