「未返却本」回収に力 茨城県内の公立図書館 長期延滞、回収に自宅訪問も

延滞者に督促する県立図書館の職員=水戸市三の丸

■期限通知、メールも活用

貸し出し期限を過ぎても図書館へ戻らない「未返却本」が後を絶たない。返却忘れをはじめ、転居や病気などが主な要因ではあるものの、次の利用者へ本が渡らなくなる弊害が発生。公立図書館はいずれも同様の悩みを抱えており、メール通知や利用者の自宅訪問など回収対策に力を入れている。

茨城県下妻市立図書館によると、昨年は1~5カ月間の延滞が多い時で114点(視聴覚資料含む)に上った。今年5月現在も35点が返却されていないという。

貸し出し本の未返却問題に対し、同館は、はがきや電話による督促に加え、3カ月以上の延滞者には家族を含め貸し出し停止、6カ月以上は自宅訪問など厳しい対応で臨む。担当者は「訪問は最終手段。実際に会って話すので、一番強くお願いできる」と話した。

つくば市立中央図書館は昨年10月、期限内返却に向けて、期限前日に通知メールを送るサービスを開始した。延滞が数日にとどまる場合、理由は「返却忘れ」が多いためだ。

新サービスの効果は検証中だが、担当者は「期限から1、2日遅れる利用者が1割ぐらい減ったようだ」と手応えを語る。また、通知を受けた人が、期限延長の手続きを取ることも増えたという。

県内最大の蔵書101万1005冊を誇る県立図書館によると、人気の本は予約者が常に4、5人いて、貸し出しに2~3カ月を要することもある。延滞者がいるとさらに予約者を待たせてしまうため、予約がある場合、返却期限を過ぎたらすぐに督促するようにしているという。

それでも思うように返却されないこともあり、館内サービス課の武田順課長(58)は、「利用者から『待っているのに借りられない。仕事をしているのか』と言われたこともある」と苦悩を明かす。

同館の督促は電話、メール、手紙など。手紙は、予約者の有無やこれまで督促した回数など、状況に合わせて表現を変えたものを送る。何度督促しても本が戻らない場合は、「最終的には法の適用を視野に入れた処置を取らざるを得ません」と強い表現で返却を呼びかける。

筑波大図書館情報メディア系の池内淳准教授は、督促以外の回収方法について「駅や学校にブックポストを設置し、返しやすくするのも一つの手かもしれない」と指摘した。

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