キッチンカーの長所と欠点、路面店の経営者が比較・解説 激安中古車、開業費用安い一方…【ゆるパブ】

足羽川河川敷にずらりと並んだキッチンカー=3月、福井県福井市つくも1丁目

キッチンカー(移動販売)は、日本では江戸時代の夜鳴き蕎麦や握り寿司などの屋台が起源とされ、その形態は現代において進化し続けています。今回は、飲食店経営者とコンサルタントの両視点からキッチンカー市場を考察してみたいと思います。

コロナ禍においては、キッチンカー導入のための補助金が多数提供されました。このため、多くの経営者が補助金を活用してキッチンカーを導入したことでしょう。現在、キッチンカー市場は飽和状態にあると言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか?

中古車市場から見るキッチンカー

まず、中古車市場では最低価格20万円程度のものもあったりします。(けっこう使い古してボロボロな感じでしたが)それでも150万~200万くらい出せばけっこう程度のいいものもありました。コロナ禍では中古車市場でキッチンカーを見つけても300万~500万くらいと結構高額な価格でした。中古車が増えているから価格は下がり、増えているということはキッチンカー出店を辞めた経営者が多いということです。

飲食業界から見るキッチンカー

飲食店を出店するコストは、居抜き店舗を利用して100万~500万円程度、建物を建てると1500万~3000万円程度だと思います。それに比べて中古のキッチンカーを利用すれば、150万~200万円程度でとりあえず出店は可能です。

キッチンカーのメリットとして、開業資金や維持管理のコストを安くあげることができます。また、集客の面で移動が可能な点は大きなメリットと言えます。顧客ターゲットに合わせて、また平日と週末に合わせて出店場所を変更できるのはとても魅力的だと思います。

シミュレーション

以下の損益表は、同様の条件でカフェを出店した場合の初期コストと損益を比較したものです。

居抜き店舗は30坪25席程度のカフェ、1か月25日営業、パートアルバイト2名を想定しています。キッチンカーはビジネス街でお弁当とドリンクの販売を想定。実際の売上は出店地域や商品によって異なり1日10万円以上いく店舗もあったりします。下記は参考例として数字を作っています。路面店を経営する立場として

路面店を経営していると、時代によって立地条件が変わってきます。私の店舗で例をあげるなら、国道8号線ができて私の店舗の近くを通る西循環線から車の通りが減ったなどです(地元の人しかわからない例えですが)。キッチンカーであれば、移動できるからとても羨ましいと感じてしまいます。しかし、店内の装飾や料理にこだわりをもって提供できる、現在のこのスタンダードなスタイルが私は好きです。

キッチンカーのあまり知られていないメリット

キッチンカーのメリットはたくさんありますが、あまり知られていないメリットがあります。それは「低コストでの退店」が挙げられます。キッチンカーは居抜き店舗や建物の建設に比べて初期投資が少なく、維持管理費や光熱費も削減できます。一般の路面店飲食店は店舗の借り手として土地や建物を購入または賃借する必要があり、高い初期費用や固定費が発生します。

さらに、キッチンカーは流動性があり、需要のある場所やイベントに自由に移動できるため、利用価値が高くなります。そのため、起業家や移動販売業界の関係者には一定の需要があるため中古車としての売却も視野に入れることができます。一方、一般の路面店飲食店は固定的な立地条件に縛られるため、需要の変化や経営の終了時に買い手がいなければ売却することは難しいのです。

まとめると、キッチンカーは低コストでの退店が可能であり、流行の変動にも柔軟に対応できることがメリットです。また、一般の路面店飲食店は立地条件の安定性や長期的な運営を考えるとメリットがあります。どちらが優れているかは置いといて、キッチンカーの柔軟性と経済的なメリットは、特に起業家や移動販売業界の関係者にとって魅力的な選択肢となっています。

キッチンカーのあまり知られていないデメリット

都会は人口が多いのでキッチンカー出店にメリットを感じます。しかしながら、ここは福井県。人口は少なくキッチンカーを常時出店できる場所はとても少ないと感じます。

1,出店場所の確保が難しい イベント以外で常時出店できる場所は限られています。そこで売り上げを伸ばすためにも福井県内のイベントにはすべて出店したいところです。

2,イベント出店でのデメリット キッチンカーで移動販売をおこなう場合、自治体をまたぐ際に保健所の許可を取り直さなければいけないことがあります。キッチンカーは「食品営業自動車」に分類され、この営業許可は各自治体の保健所でおこなわれます。そのため、移動するたびに許可取りをしなければならないのです。許可を取るためにかかる1~2万円ほどの費用と書類提出などの手間もかかります。どこでもいけるのがキッチンカーの魅力ですが、イベントがある市町村で保健所の許可申請をしなければいけないのです。

3,キッチンカーは車内で仕込みをすることができない 凝った料理などを提供するには厨房を別途用意しないといけません。例えばキッチンカーでからあげ専門店を営業しようと思ったら、仕込み済み食材を仕入れて揚げるかどこか別の場所で保健所の許可を取った厨房で仕込む必要があります。

飽和と言われる理由

東京などの都会では2020年のキッチンカー総数対前年比12%増の3794台(東京都福祉保健局「食品衛生関係事業」より)と増えています。その代わり実店舗を持つ飲食店は2019年と比べて2020年は1.3%減の19万643軒と減っています。

飽和と言われる原因は、参入の敷居の低さです。キッチンカーを始めるためには、前述したとおり開業資金が低いため、起業家にとってアクセスしやすいビジネスモデルなのです。そのため、多くの人がキッチンカー事業に参入し市場競争が激化しました。そのため、キッチンカー市場は競争が激しくなり、一部の地域では飽和状態になっていると言われています。しかし、需要が高まる場所や新しいアイデアやコンセプトを持つキッチンカーは依然として成功する可能性があります。

今後キッチンカーを利用したビジネスは参入しない方がいいのか?

市場の激化により淘汰されるキッチンカーは増えています。しかし、開業資金や維持管理費が低コストで終わるキッチンカーは魅力的です。そこで、キッチンカー出店に対するデメリットを解消しながら新規ビジネス参入を考えてみてはどうでしょうか?

新規ビジネス参入のために

キッチンカービジネスを始めるには、2つの方法があります。

1,キッチンカーを利用して物を売る 既存のキッチンカービジネスではなく移動販売に主眼を置き構築することが大事です。

例えば、飲食店にこだわらず

農家と契約し新鮮とれたて野菜を売る市場や漁師と契約して新鮮とれたて魚介を売る手作り雑貨やアクセサリーなどを売る2,キッチンカーを利用したい人のためのビジネスモデルを構築する

キッチンカー出店のデメリットを解消するビジネスモデルを構築します。

例えば

出店場所の確保と管理をする不動産系キッチンカーが出店できるイベント情報発信するキッチンカーが出店される場所を発信する仕込みをするキッチンスペースのレンタルキッチンカーのレンタルやリースこのように飲食にこだわらなければ様々なビジネススタイルを開業することができます。もちろん飲食のキッチンカーの需要はあります。しかし、主観ではありますが、現在のキッチンカーはテイクアウトが主になっているように見えるので、キッチンカーの前に飲食スペースを設置して(屋台のラーメンみたいな)利用方法が拡がってくれるといいなと思っています。(green parlor ベルベール 平等 久盛)

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【ゆるパブコラム】福井の若者や学生、公務員、起業家、経営者、研究者などがゆるくつながり活動する一般社団法人ゆるパブリック(略称:ゆるパブ、2015年福井に設立)が、さまざまな視点から福井のまちの「パブリック」に迫ります。ゆるパブメンバーを中心に執筆中。

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