人々の優しさ忘れない ウクライナ避難家族5人、帰国へ 青森・南部町

講演で平和の尊さを訴え、町の支援などについて感謝の言葉を述べたテチアナさん

 ロシア軍侵攻に伴い、戦禍に見舞われているウクライナから青森県南部町に避難しているキーウ(キエフ)出身の家族5人が29日までに、6月の帰国を決断した。避難家族の一人、テチアナさんが同日、日本語による講演を町民ホール「楽楽(らら)ホール」で行い、平和の尊さを訴えるとともに、日本ではあまり知られていないウクライナの文化などを紹介。「南部町には温かく受け入れてもらった」などと感謝の言葉を述べた。

 町は元々、生活が落ち着いた段階でテチアナさんにウクライナについて話をしてもらうよう進めており、今回が最初で最後の機会となった。会場には町職員、名川中学校の生徒のほか、避難家族に関わりがあった町民ら計約300人が集まった。

 テチアナさんは、戦禍によりたくさんの人が死傷している現状を話すとともに「日本に来たことは、最も正しい決断だった。南部町でも、周りの人たちが助けてくれた。その優しさを決して忘れません」と述べた。一方「私たちは、簡単に戦争を忘れることができなかった」と依然続く戦闘に心を痛め続けたことを明らかにした。町によると、5月中旬以降、正式に帰国することを決めたという。

 テチアナさん本人から帰国の理由が直接的に語られることはなかったが、町の説明ではテチアナさんの夫が戦地に残っていることや、子育て環境についてウクライナの方が良いと判断したことなどが理由という。工藤祐直町長は「もし、困難な状況になったらいつでも南部町に戻ってきて」と述べた。また、来場者に「今日、テチアナさんから聞いた話、感じたことを多くの方々に伝えることで、平和の輪、ウクライナに対する支援の輪が広がれば」と呼びかけた。

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