【第2回WUBS】山﨑一渉のラドフォード大2022-23シーズンを振り返る

NCAAディビジョン1のビッグサウス・カンファレンスに所属するラドフォード大の一員として、今年第2回を迎えるWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ、以下WUBS)で凱旋を果たす予定の山﨑一渉。WUBSでは日本から出場する東海大と白鷗大のどちらとも、勝負の流れによって対戦する可能性があるが、もしどちらかとの対戦がかなえば、日本の大学が単独チームとしてNCAAディビジョン1のチームと戦い、かつ相手のメンバーに日本人プレーヤーが所属しているという、かつてない、バスケットボールファンならば見逃せない機会になる。

東海大には、山﨑がFIBA U19ワールドカップ2021で日の丸を胸に戦った仲間である元田大陽(4年)とハーパー ジャン ローレンス ジュニア(3年)が所属している。白鷗大には仙台大明成高の後輩である八重樫ショーン龍と内藤晴樹が1年生として加わった。ラドフォード大の試合は本場アメリカNCAAディビジョン1のチームであるという事実だけでも、どの試合も見どころがある。しかし、東海大か白鷗大のどちらかと対戦すれば、それがどちらであっても、会場となる国立競技場代々木第二体育館は、勝負度外視でファンの胸を熱くする光景を生み出す舞台となりそうだ。

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山﨑はフレッシュマンとして1年間を過ごしたわけだが、その1年間ははたしてどんな過程だったのだろうか。

留学前の山﨑は、NCAAディビジョン1での活躍が十分期待できるだけの実績を残していた。多くのファンにとって最も印象深いのは、ウインターカップ2020決勝での大活躍だろう。東山高と戦ったこの試合で、山﨑は25得点、10リバウンド、2アシスト、3スティールと攻守に躍動。70-70の同点で迎えた最終クォーター残り5秒には、3年ぶり6度目の王座獲得を決定づけるジャンプショットも決め、大会のベスト5にも選出された。

U16日本代表チームの一員として参加した2019年初頭のチェコ遠征では、クリスタル・ボヘミアカップ(チェコ開催)で連覇達成に貢献して大会ベスト5選出。前述のU19ワールドカップでは、7試合に出場してチームのリーディングスコアラーとなる平均14.6得点を記録し、3P成功率43.9%(41本中18本成功)は大会全体の3位という好成績だった。

昨年5月、ラドフォード大が山﨑の加入を発表した際、ダリス・ニコルズHCは「一渉は能力の高いウイングシューターで、FIBAの舞台で豊富な経験を持っています」とのコメントを発信していた。「八村 塁を輩出したのと同じプログラムからの加入です。我々のプログラムとラドフォード大のコミュニティーに迎えられることを楽しみにしています」。現在NBAロサンゼルス・レイカーズの一員として大活躍する八村の名前に触れながらの紹介からも、非常に高い期待を寄せていたことが感じられる。

昨年11月1日に行われたメアリー・ボールドウィン大とのエキジビションゲームより。山﨑は3本の3Pショット成功を含むチームハイ・タイの21得点を記録した(写真/©️Radford University Athletics)

山﨑はその期待に応え、2022-23シーズン開幕直前の11月1日にホームアリーナのデッドモン・センターで行われたメアリー・ボールドウィン大とのエキジビションで、さっそく3Pショットを7本中3本成功させて21得点を記録した。この数字は同級生でガードを務めるケニオン・ジャイルズと並ぶチームハイ。対戦相手はNCAAディビジョン3のチームで、ハイランダーズ(ラドフォード大のニックネーム)としては“肩慣らし”のような位置づけの試合ではあったが、山﨑にとってNCAAにおける初の実戦で持ち味を出せた意義が小さいわけはない。チームも114-54という大勝を手にしており、この時期に踏むべきステップを踏んだと言えるだろう。

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こちらもボールドウィン大との一戦より。山﨑は豪快なダンクもぶちこんだ(写真/©️Radford University Athletics)

\--{開幕からの2試合はNCAAディビジョン1の洗礼}--

開幕からの2試合はNCAAディビジョン1の洗礼
ただしNCAAのディビジョン1はそう簡単に活躍し続けられるほど甘くはない。公式戦の最初の2試合で、ラドフォード大はチーム強化の目的から俗に“パワー6”と称される強豪カンファレンスに所属する2チームとのアウェイゲームを組んでいたが、そのどちらも敗れている。山﨑にとっても、NCAAディビジョン1の洗礼を受けるような結果だった。

開幕初戦は、ビッグイースト・カンファレンスに所属するマーケット大とのアウェイゲーム。マーケット大と言えば、現在マイアミ・ヒートの中心的存在として活躍中のジミー・バトラーや、同チームのレジェンドとして知られるドウェイン・ウェイドの出身大学だ。ハイランダーズは69-79で敗れた。続く開幕2試合目は、デューク大やノースキャロライナ大と同じアトランティックコースト・カンファレンスの名門ノートルダム大。こちらもフェニックス・サンズのヘッドコーチを2022-23シーズンまで務めていたモンティ・ウィリアムズをはじめ、何十人ものNBAプレーヤーを輩出している。結果は76-79という僅差の勝負での黒星だった。

山﨑は初戦で15分の出場時間をもらっている。パフォーマンスとしては、4本の3Pショットを放ってすべてミスに終わったが、それでもフリースローを2本しっかり決めて2得点を奪ったほか2リバウンド、1アシストを記録した。2試合目は2分しかプレーさせてもらえず、フィールドゴール1本がミスに終わったほかには主だったスタッツ項目に記録はなかった。

個人的に際立つパフォーマンスを見せられず、チームとしても連敗を喫したこの2試合はまさしく洗礼と言える。しかし、この段階で強豪相手に2試合ともコートに立てたこと自体に意義がある。その後シーズン3試合目として行われたブリッジウォーター大とのホーム開幕戦は、エキジビションと開幕からの2試合の価値を感じさせる。この試合での山﨑は、フィールドゴール3本中2本とフリースロー5本中4本を成功させて8得点。チームも97-46でシーズン初勝利を手にした。

飛躍を生む経験を積んだフレッシュマンイヤー

シーズンを通じて山﨑は36試合中33試合に出場して、平均8.8分のプレーで2.2得点、1.2リバウンド、フィールドゴール成功率38.5%、3P成功率22.9%というアベレージを残した。得点でのシーズンハイはブリッジウォーター大戦と12月4日のジョージ・ワシントン大戦での8得点。持ち味をいかんなく出せたシーズンとは言えないかもしれないが、1月30日付のビッグサウス・カンファレンス週間最優秀フレッシュマン賞の候補に名を連ねるなど、爪痕も残した。

今年1月末にはビッグサウス・カンファレンスの週間最優秀フレッシュマン賞候補にノミネートされた山﨑。1年目はアメリカを肌で感じて慣れるということに関して、十分できたのではないだろうか(写真/©️Radford University Athletics)

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ラドフォード大の現状を考えると、この経験にはプラスアルファの意味もありそうだ。ヘッドコーチのニコルズHCはまだ就任2年目。チームは2021-22シーズンの11勝18敗(カンファレンス内では7勝9敗)から2022-23シーズンに21勝15敗(カンファレンス内12勝6敗)まで成績を上げ、シーズンを締めくくるカンファレンス・チャンピオンシップでベスト4に進出し、ポストシーズンのビッグイベントの一つであるカレッジバスケットボール・インビテーショナルでも4強入りを果たしている。山﨑はどちらの舞台でも出場機会を得た。

驚くような実績がなかった1年目を悲観的に捉えるべき理由はない。2年目に向けて必要なステップは踏んでこられており、WUSBから始まる2シーズン目には、それが必ず生きてくるはずだ。

特に、持ち味とする3Pショットが本来の確率で決まり始めれば、ゴンザガ大時代の八村のようなジャンプも期待できる。WUBSでではそれを予感させるような活躍を期待しよう。

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