学資保険、子どもが生まれたら入るべき?よゐこ有野「意味ないやんか」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年5月はファイナンシャルプランナーの塚越菜々子先生に、保険について伺いました。

今回は、「資産運用としての保険」について。子どもが生まれたら学資保険に入っておいたほうがいい、というのは正しいのでしょうか?


塚越菜々子(以下、塚越):おはようございます! 私の授業は今日で終わりですが、最後まで頑張りましょう。

有野晋哉(以下、有野):先生~、ちょっと聞いてくださいよ。

塚越:有野さん、どうしたんですか?

有野:先生、壱百満天原(ひゃくまんてんばら)サロメさんってご存じですか? YouTubeのチャンネル登録者数が170万人を超えている人気VTuberなんやけど、そのサロメさんと「ゲームセンターCX」の企画でコラボしたんですけど、めっちゃ楽しかったんですよ! お陰様で、番組チャンネルの登録者も増えたみたいで。

塚越:有野さん、授業と関係ない話なら授業の後に……(笑)

有野:いや、違うんですよ。「ゲームセンターCXチャンネル」やと57万人の登録者で、「よゐこチャンネル」やと41万人、でも僕の個人チャンネルやと、ずーっと3万人なんですよ。増えると思った登録者数が増えなかった場合の保険って、何かないですかね?

塚越:そんな保険はないですね(笑) それでは授業に入りましょうか。

有野:「全然増えへんねん!」っていう笑いにはなってるけど、傷ついてるんです。そのガラスの心の傷害保険とかないかなー。

貯蓄型保険のメリットは「自動積立ができる」こと

塚越:さて、今回は「資産運用としての保険」というテーマでお話をしていきましょう。有野さんはさまざまな保険に入っていらっしゃるようですが、学資保険には入っていらっしゃいますか?

有野:今は入ってないです。子どもが生まれた時に、すぐ学資保険に入ったんです。僕の中では子どもの保険って学資保険で、利子も良くって、という印象やったけど、今はそうでもないっていうのと、親がなんかあった時用ではあるけど、保険ではなくって、ちゃんと貯めてあげてる方がいいかって思って解約にしました。僕はそう思ったんですけど、どうですかね?

塚越:そうですね、以前の金利が高かった時代では、払戻率が120%を超える学資保険があったりして、魅力的な商品だったと思います。ところが、超低金利の時代に突入して以来、払い戻し率がゼロ以下、つまり返ってくるお金が積み立てた総額よりも少なくなるケースが出ていて、商品によっては必ずしも魅力的とは言えなくなっていると思います。

有野:えぇ~、そんなによくないどころか、減っちゃうんですか! やっぱり自分で積み立てたほうがいいじゃないですか。

塚越:おっしゃる通りですね。学資保険は「貯蓄型」の保険ですが、強制的に口座から引き落とされるため、いわば自動で積み立てができるというのが最大のメリット。きちんと自分で積み立てられるのであれば、あえて選ぶ必要はないかもしれません。

有野:減ってしまうなら入っても意味がないもんなぁ。

塚越:契約者が亡くなった時に保険料が免除される、という保険の機能が備わっていることに加えて、保険料控除の対象にもなりますので、意味がないとまでは言いません。ただ、現在は払戻率も高くありませんし、ほかの積立投資型の商品を選んだほうが、結果的に多くの金額を積み立てられる可能性があるでしょう。

有野:なるほど。これまで、NISA(少額投資非課税制度)とかiDeCo(個人型確定拠出年金)の授業もありましたけど、いまは自動で積み立てられる商品がたくさんありますもんね。

塚越:そうなんです。昔は、積み立てができる金融商品の種類が少なかったですし、なんとなく「子どもが生まれたら学資保険に入っておいたほうがいい」と考える人が多かったのも頷けます。でも、いまは有野さんがおっしゃるように、さまざまな積み立て商品がありますから、学資保険以外にも選択肢がありますね。

有野:学資保険くんも、もっと頑張らなあかんな。ていうか、保険くん一族みんなやばいで、投資さんに客を取られてまうぞ~、って言っといてください。

塚越:そ、そうですね、機会があったら伝えておきます(笑)

運用に成功すれば資金を増やせる「変額保険」

塚越:学資保険のほかにも「終身保険」や「養老保険」、「個人年金保険」にも同じ「貯蓄型」の性質を持つ保険がありますが、いわゆる“掛け捨て”と呼ばれるタイプに比べて、一般的に保険料が高くなっています。特に、途中解約すると、払った保険料の総額よりも払戻金が少なくなる、いわゆる「元本割れ」リスクが高まりますので、注意が必要です。

有野:保険を選ぶ時に、つい「少しでも返ってくるなら、そっちのほうがお得やん」って考えてしまいそうやけど、もっとトータルで考えなあかん、ってことですね。

塚越:保険商品は、あくまで「何か起きた時に対する保険」がメインの目的。貯蓄や投資とは分けて考えるほうが、結果的にお得になる場合もあります。

有野:なるほど! そんなこと全く考えてませんでした。お菓子を買う時に、オマケがついてたほうがお得感あるけど、それでお菓子自体の値段が上がってたんじゃ、本末転倒。保険のおばちゃんからお歳暮くるのは嬉しいけど、結果全然お得と違うもんなぁ。

塚越:この流れでお話しするのは少し気が引けますが、学資保険を含め、先ほど挙げた保険が「貯蓄型」と呼ばれるタイプであるのに対して、「投資型」の代表として挙げられるのが、「変額保険」です。聞いたことはありますか?

有野:初めて聞きます、「変額保険」ってどんな保険ですか?

塚越:変額保険は、保険料のうちの大半を「投資」に回すことで、積極的にお金を増やすことができるタイプの保険です。

有野:え、保険を買ったら投資までしてくれるんですか? 流行りの二刀流や、入ります!

塚越:払った保険料のうち、一部は死亡時の保険金などの保障のお金に回り、残りは「特別勘定」という別のお財布に入れ、そちらを投資に回しましょう、という仕組みが違う点ですね。学資保険など貯蓄型では、資金が半分になるということはありませんが、その代わり資金が大きく増えることもないんですね。変額保険は、運用に成功すれば大きく増やせる可能性があります。

有野:そう聞くと、変額保険のほうがいい気がしてくるなぁ。でも、「運用に成功すれば」ということは、失敗したら損する、ってことですよね、先生? 保険やのに、リスク付き……あ、二刀流や!って違う、これは二刀流じゃない。失敗したら損するのは保険として危ないなー。

塚越:おっしゃる通りです(笑) これは投資の基本ですが、大きく儲けようとすればするほど、その分、損をするリスクも高まります。これは、「変額保険」についても同じですね。

「保険」でも「投資」でも目的を考えることが大事

有野:変額保険は保険料を投資にまわす、ってことは、その投資先とかによって、いろんな種類があるってことですか?

塚越:そうですね、変額保険は保険会社によって、さまざまな種類があります。ざっくり言うと、「手堅く運用するコース」と、「積極運用で資金を増やそうとするコース」を自分で選ぶ感じですね。なかには、保険の期間や、「日本型」や「外国型」、「株式型」や「債券型」など、運用コースが細かく設定されているものもあります。

有野:保険の種類選ぶのも難しいのに、更に運用先も選ばなあかんのかぁ……NISAの時もそうでしたけど、「この中から選んで」って言われても、どれを選べばいいのかわからずに悩んでまうんですよね。

塚越:やはり、自分の目的や考えに合ったものを選ぶしかないですね。途中でコース変更も可能ですが、あまりに頻繁に変えると追加で手数料が発生することがあるので、最初によく考えたほうがいいでしょう。

有野:うわ~、1番嫌いな手数料を取られるんや。取られへんように、1発で決めたいけど、そんなん言われたら余計に悩んでまうわ(笑)

塚越:「変額保険」は1つの契約内で保険と投資の両方ができるのがメリットですが、注意していただきたいのは、一部が保障のためのお金、一部が投資のためのお金と、資金が分かれてしまうことです。もし、「投資」を目的とするなら、全額を投資に回した方が、投資の効率はよくなりますよね?

有野:手続きが面倒でも、保険と投資を別々にしたほうが、効率がいいわけですか。

塚越:実は、変額保険の保険料の内訳は公表されていないことがほとんどで、仮に支払う保険料が3万円だとして、そのうちの半分程度しか投資に回っていなかった、という可能性もあるんです。

有野:えぇ、半分ですか!? 少ないなー、それになんですか、ほとんど公表されてないって。保険と投資の内訳が公表されてない、二刀流なんて信用ならないでしょ。

塚越:それなら、3万円すべてを投資に回した方が効率的ですよね。同じ10%のプラスとなった場合、半分しか投資に回っていなければ、プラス分は1,500円。全額を投資していたなら、3,000円です。これだと差は1,500円しかありませんが、もっと金額が大きくなれば、その差は歴然でしょう。

有野:入れる額も300万円だったら、プラスは15万円と30万円になるわけか。全然ちゃいますね。そんな不透明な変額保険に入る人いないでしょ。

塚越:私がお伝えしたいのは、先ほどの貯蓄型の保険や、この変額保険も含めて、目的や商品の仕組みなどをきちんと考えず、「なんだかお得っぽい」という感覚で契約する人が非常に多いということなんです。

有野:入るんや。でも、「お得っぽい」って考え、めちゃくちゃ身に覚えがあります(笑)

塚越:「同じ保障内容の保険に加入されている場合」という条件付きであれば、保険料というコストを支払ってまで、変額保険に入る必要はありません。投資で資金を増やすことが目的なら、NISAでもiDeCoでも投資信託でもいいので、そちらに資金を振り分けるべきでしょう。

有野:保険を選ぶ時の話もそうでしたけど、やっぱり買う前にちゃんと目的を考えて、その目的に沿った商品を選ばないとアカン、ってことですね。

塚越:あくまで保険は、ピンチに陥った時に必要なもの、ということだけは忘れないでくださいね。

有野:はい! 転ばぬさきの杖の保険やのに、得しようとか考えて勿体無い事してたなー。保険やのにね。先生、間違った保険に入ってしまってた場合の「損してたな保険」ってないですかね

塚越:そんな保険もないですね(笑)

有野:そらそうですね。先生、長いことありがとうございました!

6月からは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝( @yamanakanobue )先生をお迎えし、「投資信託」について学んでいきます。次回は6月6日配信予定。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

塚越菜々子

CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士。税理士事務所に15年間勤務し、500件を超える企業や個人の財務経理に携わる。2017年に独立後、2,600人の家計や資産運用のサポートを行いながら、SNSやYoutube(登録者数8万人)で身近なお金について、専門的なことを噛み砕いて発信。日本テレビZIP、テレビ東京ワールドビジネスサテライトなどメディア出演多数。著書『書けば貯まる!共働きにピッタリな一生モノの家計管理』(‎翔泳社)

ライター:新井奈央

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